2008年03月02日

良い仕事をして欲しいと思うなら。

良い仕事をして欲しいと思うなら。


相応の権限と報酬を与えるべきである。

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産婦人科医が足りない、小児科医が足りない。
……当然である。

彼らに、相応の権限と報酬を与えるべきである。
そうすれば、不足は解消するであろう。

でも現実は、逆をやっている。

医学的判断の権限を奪い、
最善の努力を尽くした結果でさえ訴訟沙汰にされ、
医療費抑制の掛け声の下、報酬は下がる一方である。

本人の献身的精神と努力だけでは、
どうにもならない状況に追い込んでいる。

だから、減っていく。

それなのに、制度を決める者たちは現場の実情を見ようともせず、
不足している事実だけを見て安直な対処しか行わない。

なるべくしてなった結果である。

まともな医療行政を遂行できる人材は、
厚生労働省には居ないのか。

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良い教師が足りない。教育の質が低下している。
児童生徒の学力が下がっている。
……当然である。

教師に、相応の権限と報酬を与えるべきである。
そうすれば、優秀な人材が集まり、教育の質は向上するであろう。

でも現実は、逆をやっている。

現場の教師の権限を奪い、自主性を奪い、
校長や教育委員会のがんじがらめの支配下に置き、
本来の教育以外の膨大な雑事をあてがい、
家庭教育まで学校に押し付ける横暴な親たちにも対処させられる。
授業準備と教材研究に必要な長期休暇も潰され、
朝も夜も休日も部活や生徒指導に忙殺される。
地方財政の逼迫を理由に、給与水準も年々抑えられている。

だから、優秀な人材が集まらない。
熱心な者ほど心を病み体を壊して現場に留まれなくなる。

それなのに、制度を決める者たちは現場の実情を見ようともせず、
学力低下の調査結果だけを見て安直な対処しか行わない。

なるべくしてなった結果である。

まともな教育行政を遂行できる人材は、
文部科学省には居ないのか。

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良い公務員が足りない。行政の質が低下している。
……当然である。

役人に、相応の権限と報酬を与えるべきである。
そうすれば、優秀な人材が集まり、行政の質は向上するであろう。
汚職防止のためのシステムは必要であろうが、
だからと言って優秀な者を排除しては意味が無い。

でも現実は、逆をやっている。

健全な行政判断を行う権限を徹底的に剥奪し、
行政改革の旗印の下で報酬は下がる一方である。
市民もマスコミも、役所が悪の巣窟であるかのように糾弾し続け、
針小棒大に悪事を誇張し、善事には全く目もくれない。

だから、優秀な人材が集まらない。
理想に燃えるものほど己の力不足を嘆いて、
ある者は傷心のうちに現場を去り、
ある者はそれでも自らを鞭打ち続けた挙句に心と体とを病む。

それなのに、市民やマスコミ、タレント首長たちは現場の実情を見ようともせず、
世論の勢いだけで安直な対処しか行わない。

なるべくしてなった結果である。

まともな行政評価ができる人間は、
市民やマスコミには居ないのか。

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良い設備屋が不足している。建築設備の質が低下している。
……当然である。

設備屋に、相応の権限と報酬を与えるべきである。
そうすれば、優秀な人材が集まり、建築設備の質は向上するであろう。

でも現実は、逆をやっている。

設備をやらない意匠屋にすべての権限を付与し、
技術の分からない芸術家にも技術的権限を持たせている。
報酬は意匠屋の3分の1以下を更に機械設備屋と電気設備屋に分配する状態。
それどころか、「設計協力」と称して設備工事業者に無償で設計行為を行わせる始末。

だから、優秀な人材が集まらない。
既に居る者たちにも、
「おまえたちは建築士ではないから、建築設備設計を行うことは違法だ」
と罵声を浴びせかける。

では、制度どおりに建築士たちが設備設計を行えば良い。
なのに、決して行おうとはしない。

「わたしが指示して、わたしの責任で設備設計図に印を押しているから、問題ない」
と、建築士たちは平気で言う。自らの言の矛盾に気づかない。

建築士団体や行政は現場の実情を見ようともせず、
設備設計一級建築士などという論理的に矛盾した資格を創設して
ふんぞり返っている。

なるべくして、なってしまう。

まともな建築生産システムを構築できる優秀な人材は、
建築設計業界や国土交通省には居ないのか。

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ああそうか。居ないんだ。

相応の権限と報酬を与えられないから、
優秀な者たちは既に逃げ出しちゃったんだ。

利権と感情だけで動き、
自らの立場を守ることで精一杯なんだ。

じゃあ、しょーがないなー。

そうだねー。しょーがないっしょ。

(「良い仕事をして欲しいと思うなら。」おわり)


【追記】
「良い設備屋」じゃないワタクシが言うんじゃ、説得力ありませんね。

【追記2】
医師・教師・公務員という崇高な職業と、設備屋とを並べるなって?
……ええ、仰るとおりで。返す言葉もございません。
posted by けろ at 20:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 建築士制度 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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