2007年10月22日

H19一建製図(2)

この課題では、どのような空調方式があり得るでしょうか?

【単一ダクト方式】

昔の公共施設(特に、国の機関)だったら、オーソドックスな方式なんじゃないでしょうか。──昔の、ね。


この方式を選んだとすると、空調としては、かなり力の入った建物になります。

子育て支援とコミュニティーという、使用時間帯の異なる2つの部門があるわけですから、それに応じた系統分けを行う必要が出てきます。

一般的には、空調機(エアハンドリングユニット)が各部門毎に分けられることでしょう。1台で済ませて、ファンインバーター+VAVということも方法としては可能です。

2台にする場合、空調機械室を部門毎に分けるか、1ヶ所にまとめるか、そのあたりの考え方もあるでしょう。

空調機械室の場所によって、ダクトルート確保の要否が変わります。課題文にはDSを記入するように書かれていませんが、この方式の場合には必ずDSを要しますし、空調機械室の位置によって相応しいDSの場所が変わります。そのあたりが適切に計画されているか、というところが、「設備に関する理解が有るか」のポイントでしょう。

ともかく、空調機1台か2台かによって、空調機械室の面積が全く違ってくることは自明です。


単一ダクト方式では、空調機の他に、温熱源、冷熱源がそれぞれ必要になります。オーソドックスなパターンでは、ボイラーと冷凍機、ということになりましょうか。

ボイラーと言っても、法律上のボイラーではなくて、『温水発生機』なるもの。真空式や無圧式のもの。もちろん、法的なボイラーを置いても構わないですけど、管理費用を考えると有り得ないのです。

この規模の施設ですと、一緒にまとめた形の冷温水発生機を置くのも大いに有りでしょう。

冷熱源があるとすると、屋外に冷却塔を置くのが一般的ですね。

平面計画上どこに冷却塔を置きましょうか。そんなところも、気になるところです。(と同時に、意匠専門の設計屋さんが設計段階ではまったく気にしない、というか知らない、ところです)

冷却塔を置くスペースが考慮されていないような計画だと、アウトですね(設備的には、ですよ)。苦し紛れに屋上にドデンと置いてしまうと……。意匠的にも機能的にもえらく変なものになってしまいますよね。まあ実際、そういう建物も見受けられるわけですけど。取ってつけたような目隠し板が巡らされて。


というわけで、方式を自由に選べるのだとすると、単一ダクト方式は採用しないほうが何かと好都合ではないでしょうか。多方面に影響が大きいため『設備に詳しくない』ことが露呈し易い方式と言えます。


それに最近は、実際この用途のこの規模の建物では、単一ダクト方式を採用することは殆ど無いと思いますし。

ひたすら過去問演習に明け暮れ、過去問でよく見た「単一ダクト」を深く考えずに想定してしまうと、墓穴を掘る。そういう課題なんじゃないかと勘繰ってみたり。

実際、この規模の建物の設計に関わった方であれば、おわかりになると思います。そのあたりの「実務経験」もモノを言うのではないかと思いました。

以上、『単一ダクト方式』についての意見でした。


【追記】
以上の内容は、飽くまで設備屋サイドから見た感想です。試験の採点ポイント、合否には、ほぼ関係ないと思って差し支えないのではないでしょうか。

なぜなら、上記のようなことを考えて製図試験に臨める受験者は、おそらく1パーセントいれば良いほうでしょう。これを重視してしまうと、合格者が極端に少なくなってしまいます。

ですから、ワタクシの感想としては、これは来年度以降への『予告状』的性格のものではないか、ということです。昨年の「構造の要点」「設備の要点」が今年具体的に発展した形で出題されたように。特に、21年からは学科の科目構成など大きく変わるようですし。

けれども、いきなり大幅に変わったりはしないと思います。徐々に、毎年予告状を出しつつ。

基本は、そんなに変わっていかないんじゃないでしょうかね。


(「H19一建製図(2)」おわり)
posted by けろ at 15:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 建築士試験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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