2007年10月17日

H19一建製図(1)

先日、平成19年一級建築士の製図試験が行われました。

これから数回に分けて、この製図課題について考察してみたいと思います。

ただし、設備の実務上の視点からの考察であり、試験突破に向けたものではないことをご承知おき下さい。

(試験を実際に受けたわけじゃございませんので)


【設計条件について】

今年の試験問題には、構造種別と設備については適切に計画するよう書かれていました。



今までは、指定されているのが一般的でしたから、より「実戦的な」課題になったのではないかと思います。

そうです。通常の建築計画において、構造種別や設備が決まっていることなどあり得ないのです。

プランを練りこんでいく段階で、構造計画や設備計画が同時進行で進められなければならないのです。

実戦力のある一級建築士を養成しようという意思が何となく見て取れるような気もしました(気のせいかも知れませんけど)。



構造計画次第で、スパンが変わるでしょう。架構が変われば、プランに影響が出るはずです。

設備計画次第で、機械室やPS、DS、EPS、屋外の機器設置スペースなどが変わってきます。はじめから機械室面積が条件として与えられているというのが、変だったのです。

そういう意味で、良い方向ではないかと思いました。



「そんなぁ。機械室の面積なんて、さっぱりわかんないよぉ」

そういう向きもあるかも知れません。でも、それではダメなんです。
設備の無い建物だけを設計するなら構いませんが、世の中そんな建物はごく僅かです。

とは言え、過去の課題程度の面積を用意しておけばケチはつかないのではないでしょうかね。どうせ設備設計屋が採点するわけじゃありませんから。思いっきり変じゃなければ、可だと思います。



「今後の試験に向けて、どうやって準備していけばいいのやら」

そうですね……、より実戦的な考え方をするよう心がければ良いのではないでしょうか。

飽くまで意匠設計レベルで最低限必要な設備関連知識があれば良いわけですから、設備設計の勉強をする必要は無いでしょう。

プランの計画をする際に、当然どこかで誰かが設備設計をするはずですから、どんな方式を採用し、そのためにどれだけの機械室、シャフトスペースが必要なのか、設備担当者と良く意見交換する。実際に出来上がった建物を見て、どんな方式だとどのくらいのスペースなのか、感覚として身につける。

そんなことで良いのではないでしょうか。



製図課題の規模である2,000〜2,500m2程度の公共建築を見てみるときに、ちょこっと気にしてみましょう。



「え、でも、そんな設計経験ないし……」

その場合は、何とも申し上げられません。
建築士試験の受験資格には、「実務経験」が必要なのです。
その実務経験(書類上じゃなくて、実際的に)が無くては、仕方ありません。

────これからの試験は、徐々にそういう方向になっていくのではないでしょうか。そんな気がします(そう期待しています)。



医師も弁護士も、「実務経験」は不要です。資格取得後に経験を積んでいくわけ。

でも建築士は違うのですよ。



本来的な実務経験は無くとも、資格学校でそれなりの対策をすれば受かる。

────ずっとそういう試験であったために、現状のいろいろな弊害があるんだと思います。


(「H19一建製図(1)」おわり)
posted by けろ at 16:18| Comment(6) | TrackBack(0) | 建築士試験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして、
電気設備の設計をしています。
この前1級建築士の製図試験を受けてきました。
結果は× 計画の要点を書くのに時間をとられ、
時間がなく、最後はフリーハンドなぐり書きになってしましました。
建築系の学歴がないので(電気工学科卒なので)まず実務経験で2級建築士の受験資格を取り、2級建築士独学で合格、登録、その後4年の実務経験でやっと得た1級建築士の受験資格。去年は学科を独学で、ぎりぎりで通過したものの、製図で×。今回、後がないと資格学校に大金をはたき、すべての講義に出席、課題もすべて提出したが、現実は厳しかった。
しかし、なんとしても設備設計1級建築士になりたくて、あきらめきらないのです。
Posted by かめ at 2007年10月17日 22:30
かめ さま、いらしゃいませ。
このブログ、よく発見されましたね。

ワタクシも、似たような境遇かも知れません。
2級経由で昨年初受験、学科×。
今年2回目受験、学科×。
勉強ぜんぜん足りませんから、仕方ありませんけど。

ワタクシは……別に「設備設計一級建築士」になりたいとは思っておりません(矛盾した制度だから)が、実務上一級があった方が何かとめんどくさくなくて良さそうだから、やっぱり取ろうかなぁ、という程度です。

「設備設計一級建築士」は、設備全般責任を持たないといけません。ワタクシは空調衛生屋なんですけど電気のことまでは責任持てません、というのが正直なところです。

この制度は、うまく回っていかないんじゃないかと思っています。

設備設計、電気設計は、意匠設計とは責任領域を分けるべきだと、ずっと思っています。

電気設計をされている方で一級を持っている人を、ワタクシはほとんど知りません。ぜひとも、かめさま、貴重な一人になってくださいね。


> 計画の要点を書くのに時間をとられ

すごく、気持ちわかります。ワタクシも、きっとそうなってしまったと思います。設備設計って、そこから入るから……。

どうぞ、来年こそ合格されますように。
Posted by けろ at 2007年10月18日 02:09
けろさん、お返事ありがとうございます。
私も、今回の建築士制度改定は矛盾を含み
現場の実情を知らない人が机上の理論で
決めたものだと思います。
建築士が設備含めてオールマイティーに
責任を持つのいうのは無理な話であり、
意匠、構造、空調、衛生、電気それぞれが
対等の立場で協力して建物を作っていく制度に改正すべきだったのに、建築>設備の力関係で、
今回のような制度になってしまったのだと思っています。
しかし、手をこまねいていても何も始まらないので
建築科出身でも1級建築士を持っていない人がいるのに電気科出身でも1級建築士を取れるんだ、そんな例になりたくて建築士試験を受けている次第です。
けろさんのブログを見て、設備で1級建築士を受けている人が自分の他にいるということで、来年に向けてまたがんばろうという気が出てきました。
Posted by かめ at 2007年10月18日 20:48
かめさん、製図試験おつかれさまです。 来年の一級建築士試験が現行制度の最後の試験になりますね。 来年の学科合格者は、来年・さ来年の製図試験を現行制度のまま受験できる最後のチャンスとなります。 さ来年からは学科試験は学科T〜Xの五科目となり、初めて環境・設備が単独の学科試験として行われます。 そして、予想としては製図試験が基本計画・製図+専門分野製図となりそうです。 審議会の行方によっては専門分野製図はなくなる可能性もありますが、今年度以上に専門分野の計画が重視されるはずです。 国土交通省の認識が薄いため、電気・機械・土木系学科出身者の受験資格は改善される要素がありませんが、少しづつでも建築士の中に飛び込んで意見できる人材を増やさなければならないと思います。 電気系はもっとも建築士に対してハードルが高いと思いますが、健闘を期待します。
Posted by masa at 2007年10月19日 01:11
かめ さま。

> 来年に向けてまたがんばろうという気が出てきました。

ワタクシも、かめさまのコメントを拝読し、来年こそ頑張ろうという気が出てきました。
ありがとうございます。

masa さま。

いらっしゃいませ。お久しぶりです。
制度を多少変えようとも「意匠屋」寄りの試験であることは変わりないようですから、きっちりそっちの勉強をして、食らい付いていかねば、と思っている次第です。
思っているだけじゃ、ダメなんですが……。
まずは、H19課題の検証を進めたいと思います。
Posted by けろ at 2007年10月19日 16:50
けろさん、おひさしぶりです。
意匠設計の受験者も今年の試験で、構造・設備について設定した内容を記述する事に戸惑った人が多いみたいです。 構造に関してはやはり、RCしか練習していなので、プレイルームの屋根だけ鉄骨造で記載したり、設備方式については、イメージはつかんでいても名称がわからなくて、単純に単一ダクトとかパッケージなどの記述ですませたりしたようです。 なにはともあれ、意匠設計者も構造・設備に対して興味をもって、国土交通省が定義したすべての建築設計(意匠・構造・設備)が行える一級建築士となるなら良いような気もします。 実際はやはり意匠設計者はデザイン志向でないと仕事が受注できないので、なかなかそうはならないかもしれません。
審議会はなかなか、改正案について公表しませんが、密室の中で決定した内容が今回の混乱を生じさせた事を反省しているのかが心配です。
今回の構造設計偽造により、また一方的に国土交通省が突っ走るととんでもない事になりそうですね。 
Posted by masa at 2007年10月20日 02:06
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