2023年11月11日

雨宮21号

蒸気機関車の名称である。


鉄人28号の兄ではないが、
鉄塊であることにおいて、類似性は認められよう。


それほど大きな車体ではない。


23111101.JPG


これの特長は、
現役で稼働中ということである。


もちろん、移動手段としての交通路という意味では
とっくに引退している。

しかし、観光用としてではあるけれども
動態展示として、人を載せた客車を引いて駆動する、
力強い動輪を、その活躍を、間近に見ることの出来る
今となっては貴重な存在に違いない。



「北海道遺産」と、看板にある。



北海道遠軽町にある、「丸瀬布森林公園いこいの森」内に敷かれた
鉄路を疾走る。


「丸瀬布」は、「まるせっぷ」と読む。
北海道っぽい地名である。
もちろん、アイヌ語由来。

元々は丸瀬布町であったけれども、
平成の大合併の折に遠軽町と合併した由である。

町名は遠軽であるけれども、
遠軽町・丸瀬布町・生田原町・白滝村の3町1村による
対等合併なのだそうだ。

「対等」と言いつつも、名称的にも規模的にも
吸収された感が出てしまうのは否めない。
申し訳ないけれども。


しかし、旧丸瀬布町にて守られてきた雨宮21号は
今なおその勇姿を誇っているのである。



要は、疾走る炉筒煙管ボイラー、ってことだよね?

23111102.JPG

なんていう「要は」は、たいてい的を外している。

昭和3年製作の機関車が、令和の時代にも稼働している。
そこが、感動的じゃないだろうか。



「駅」は、このために造られたもので、
特にどこかから移築してきたわけではなさそうである。


23111103.JPG


画像に白い線が入っているように、
あいにくの雨天であった。

平日でもあり、
決して多くの人たちが訪れているようは状況ではなかったけれども
それゆえにじっくり、ゆっくり、堪能することができた。



客車部分は大正14年製作のものを西武鉄道から譲渡されたものという。


23111104.JPG


何度も戦力外通告を受けつつも
今なお現役生活を続けているのである。



機関車も、元々は森林鉄道であった、


23111105.JPG


30年に満たずしてスプラップ行きの運命となるも、
保存運動のお陰で生き残ったという。

今は亡き方々かもしれないけれども、
Good job! である。



23111106.JPG


いろいろな部品は相当置き換わっているのだろうけれども
メインの缶体はたぶん、当時のままなのだろうし、
決してテセウスの船的なモノではないに違いない。


こうしてメンテナンスをして、動かす人が居るというのが
すごいことである。

けっして多くの報酬を得られるわけでもないだろうに、
ロマンと情熱で携わっておられるのか。

世の中決して、経済屋さんが説くように
金勘定だけで回っているのではないのだ。
特に技術分野においては。

ま、資金があるに越したことはないし、
ふんだんにあるならば大規模に推進されるのは確かだけれども
損得勘定で言えば圧倒的に「損」であると
バッサリ切られてしまっても仕方なさそうな存在にも
価値を見出す人たちも決して極僅かではない、
ということなのだ。

ワタクシも、
矮小なれども、その片隅に蠢く存在であろうと
思っているのだけれど。



客車も、美しく保たれている。


23111107.JPG


何度も塗り直されて、
決してみすぼらしくないように維持されている。

素晴らしいことである。



最初の看板にもあったように、
燃料は木材と石炭である。


23111108.JPG


機関車のうしろに連結されたテンダーには
薪と石炭とが積んである。


スコップと一緒に。


運転士 兼 整備士 兼 火夫 である人物が
時々炉を開いてくべている。



いこいの森の中を運転するのであるが、
冬期は休業している。

毎年シーズン初めの パンフレット に
運行日が記載されている。

事前によく確認しておくのをお勧めする。
ま、たいていの旅行は、そうだね。

特に地方に、遠くに行くほど、事前準備と確認は大切だ。
もっともそれは、目的がある場合なのであって、
「雨宮21号に乗ること」を外せない目的として
設定する場合には、である。

乗り鉄でない方にとっては、
不必要な情報かもしれない。



それなりの距離を走ってくれるので、
結構堪能できる。


機関庫なども、脇を通ってくれるので
ありがたい。


23111109.JPG


自分としてはガチな鉄ヲタである気はないのだけれども
鉄分が有るか無いかと言えば、
まあ有る方であるかとは思う。

だから、この類のものは、
事情が許すのであれば、乗りたいほうである。



現代において、3大都市圏を除いては、
鉄道はもはや産業遺産と化しつつある。


第3セクターでの運営も厳しくて
人口減少・乗客減少・運賃値上げ・減便・廃線の
一方通行路のどこにいるかの違いでしかなくなっている。


やがて、こういう動態展示でしか
見られなくなってしまう存在となるのかどうか。



鉄路の敷設、トンネル、鉄橋、動力供給、
整備、保線、安全管理、料金収受、事故対応、
災害対応、採算性、などなど
現代においては、あまりにも課題が多すぎるんだろう。


ちょいと、淋しいものである。
(「雨宮21号」おわり)
posted by けろ at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 交通 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック