ひっそりと、慎ましやかに、目立たずに存在している。
一応、表示看板も出ているし
赤字に抜き文字で「送水口」という表示もあるけれど
場所的にも、色のくすみ具合的にも
目立たないこと著しい。
溶接された鋼管で、屋内の放水口(消防隊専用栓)へとつながる
水の通り道。
消防ポンプ車に接続されて、
水が送り込まれて、
火災発生階における消防隊の消火活動に寄与する。
そんな「連結送水管設備」の、
水の送り口となる部分である。
いざというときのためのもので、
実際に使用される機会はほとんどない。
「いざ」という機会がほとんどないのだから、
しかも、無いのが望ましいのだから、
当然のことだ。
飛行機の酸素マスク、
コックピットからの非常脱出装置、
転ばぬ先の杖、
そんな用途の設備であるからして。
それでも、いざというときに機能しないのでは意味がないから
定期的に試験を行う。
それによって、非常時の対応を担保している。
が、この存在と使用方法は
消防隊が認知していれば良いので
必ずしも思いっきり目立つ必要はない。
「ここにあるよ」というのは
消防当局にも届け出てあって
あちらでも把握していることになっているから。
それでも、非常時に
「どこにあるねん。わからんやん」
ということでは困るので、
ある程度の表示が設けてあるのである。
だから、探せば簡単に見つかる。
けれど、意識して見なければ、
その存在に気づくこともない。
そういう、微妙なさじ加減が
いい感じに効いている、
そんな設備なのである。
(「ひっそり目立たず」おわり)
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