入口は、当然引き戸である。
ストレッチャーが入るだけの空間が確保されている。
スプリンクラやら非常照明やら感知器やら
一通りのモノはついている。
2方向吹出のエアコン室内機と、
換気口(給気口だね、たぶん)と、
スピーカーと、全般照明の器具。
ベッドに横たわって見上げた視線である。
輸液バッグを吊ることができるようにもなっている。
要は、ピクチャーレール?
もうちょっと重量があるから、少し頑丈?
「点滴レール」というものも、あるのね。
2床室だったら、カーテンレールもつくんだろうけど。
横には、病室用キャビネット。
テレビに、カードリーダーに、
引き出しの類に、
冷蔵庫。
手は……ぜんぜん届かない。
起き上がって歩ける人じゃないと
使えない。
あるいは、来訪者。
図面上では、点線で描くだけの備品だ。
天井につく諸々も、
シンボルでテキトーに散りばめて描くだけのものだ。
けど、実際にその場で使う立場になると
また違った見え方になるものである。
餅の画を描くだけのお仕事だけれども
実際に食ってみなくちゃわからんことが
多々あるものである。
だからって、
実際に手術してみたり、されてみたり、
解剖してみたり、されてみたり、
霊安室に寝てみたり、
ICUで多種多様な管に繋がれてみたり、
なかなかそういう機会は無かったりする。
あったとしても、される立場の場合には
意識が無かったりするから経験しても残らない。
とにかく、
いろいろ経験することは、
無駄にはなるまい。
何かの役には、立つのだ。
たとい立たなかったとしても
観察して楽しむことくらいは
できるのである。
(「病室」おわり)