ときどき骨董品を見かけることがある。
キミは、一体いつからここで働いているんだい?
出自は、東芝さんなんだね。
社名もいろいろ変わってしまったから、
キミがメーカーの関係者の手を離れてから、
何十年も経っているんじゃないかな。
「メンテナンス」なんていう単語は
キミの辞書に、載っているかい?
外装の針金は、もうグニャグニャだ。
幾年もの風雪に耐えてきた勲章だね。
据え置かれているアングル架台は
何とか形状は保たれているね。
ただ、強度的に、どのくらい健全性が残っているものか
ちょいと、わかりかねるね。
それでも、建物へ冷媒管を導入している部分には
三角コーンが置かれていて
一応、曲がりなりにも、キミが無視されてるんじゃないって
そんな雰囲気はあるよね。
どのくらい、働けているかな。
本来、新品だった時の能力は
まだ発揮できているかな。
それとも、効率が下がってきているかな。
ここまでになると、
あとは何時交換されるか、
そんな感じかな。
ま、生き物じゃないからさ、
時期が来れば「産業廃棄物」になってしまうのは
仕方がないよね。
むしろ、開店したはいいけれど
ほどなくコロナ禍の顧客激減で閉店を余儀なくされ、
まだまだ新しいのに廃棄されることになってしまったような
機器たちのことを思えば、
十分に全うしたって言えるよね。
役割を、余すところなく果たしたよって
胸を張って宣言できるよね。
(どこが胸かは、ともかくとして)
キミの姿を見かけたのも、なにかの縁。
こうやって、ネット上にその姿を留めておくことにするね。
(「長い間ご苦労さま」おわり)