ところどころ、剥がれた鉄板。
木枠で支えられているのは、
ゼロ戦の翼である。
着氷実験に使われていたものなのだそうだ。
戦後45年を経て発見され、
発見後さらに14年を経て回収された歴史遺産なのだそうだ。
第二次世界大戦の戦後78年にもなろうとしている現在にも
航空機やミサイルやドローンなどを駆使して
ドンパチやっている場所があるのだが、
「ニンゲン」というものは、基本的に変わらんものなのか。
ただ、開発するエンジニアは、戦闘云々よりも
メカそのものに興味関心があるだけなのかもしれない。
ダイナマイトにしても刃物にしても航空機にしても、
そのモノ自体に善悪があるわけではなくて
それを人間がどう利用するかによって
善ともなり悪ともなる、ということか。
じゃ、核兵器はどうか。
たとい「廃絶」と合意したとしても
やはり人類は合意を反故にすることもあって
また、強力な独裁者による国家においては
合意など意味をなさなくなるのだから
「抑止力」としての意味があるのだという考え方もある。
簡単な話じゃ、ないはずのことだ。
まあ、面倒な話は置いておいて、
技術開発には実験は付きものである。
より厳しい環境下で期待する性能を発揮すべく
実験を繰り返すしかないのである。
たとい世界最強のスーパーコンピューターを駆使した
シミュレーションを行ったとしても
そのアルゴリズムに組み込むことができなかった
未知の現象については再現しようがない。
ひたすら、「トライ&エラー」を繰り返す。
技術の発展の秘訣は、結局そこに行き着くのだと思うのだ。
それにしても、よくもこれを発見しようとしたものだ。
そして、よく見つかったものだ。
更には、よくぞ回収して、展示したものだ。
悲惨な交通事故による犠牲者が多数生じていたとしても、
自動車に対する格好良さに魅力を感じて虜になる人が居るように
戦時の爆撃による多大な犠牲者が世々あったとしても
戦闘機を好む人もいる。
メカとしての機能美が、
より如実に表現された存在でもあるから。
その点、建築設備は比較的平和なんじゃないかと思うのだ。
(もちろん、完全に平和な代物というわけでもないのだが)
(「ゼロ戦の翼」おわり)