2023年03月18日

ここまで造ったんだけどねぇ

どんどんと上方に組み上がっていく、
鉄骨。



タワークレーンを据えて、絶賛施工中


……のはずだったそうなんだが。



23031801.JPG


たまたま、近くに行った時に撮っていたんだけどね。



なんと、一度壊して建て直す ことになったそうだ。


読売本社の記事だからかどうか、
現地ではなく大成建設本社ビルの画像しかないが、
地元の新聞社 はちゃんと現物を取材している。


もちろん 地元テレビ局は動画付き である。




「ひどいことだ」


そういう評価も、わかる。
その通りでもある。



けれど、こういう事態がちゃんと表に出てくるのは
良いことだとも言えると思うのだ。



これが、高度成長期や、バブル真っ盛りの頃だったら?



たぶん、「無かったこと」「気付かなかったこと」
場合によっては「担当者と上層部だけの秘密」
になっていたのかもしれない。

(飽くまで、想像だよ?)



でも、ちゃんと表に出てきて、
「ダメなことなんだ」という認識が、社内でも共有されて、
まあ、スーパーゼネコンだからカネは何とかするっ! てことも可能で
解体の上「建て直し」なんていう決断も出来る。



すばらしいことじゃないか。


そう思えるのである。



まあむしろ、この段階で良かったのだよ。

これが、外装設備内装いろいろ進んだ後だったら
もっともっと大変だったのだよ。

(いやむしろ、そこまで進んでいたら、
 検査員も気付くことができなかったかも)



ただでさえ資材不足、人手不足、物資高騰でいろいろ大変な中
もっと大変なんだけれども、
そして大成建設への信用は思いっきり失墜したのではあるけれど
挽回の余地はあるわけで。



23031802.JPG



建設にかかわる技術者の不足が言われて久しい。

そこには、技術の継承の不備が伴っていることだろう。

だからたぶん、これからも、いろいろ出てくるんだろう。


それでも、こうやって「ちゃんと直す」ことができるのであれば
まだまだ何とか大丈夫だろう。



が。



表に出てくることなくそのまま闇に隠れている諸々は、
たぶんそれなりにあるんだろう。


中小のゼネコンだと、こんなビルを建て直すような資力は無い。
公にして倒産するか、黙っているか、どっちかであろう。



バブル期に一気に膨張していろいろ建てまくって
バブルが弾けて倒産した会社がいくつもあるはずだが
それらの建物は大丈夫なんだって
誰が保証できるだろうか。


誰にもわからないのだ。




そして、建築構造には安全率やら何やらがあって
多少の不都合を抱えていたとしても
平時には何とか保っていることであろう。

耐震基準にかかわるような、大地震がやってきたときに
果たしてどうなることか。

なってみないと、わからないのだ。



ま、建物なんて、そんなもんだと思うしかなかろう。



超高層ビルだって、
技術の粋を集め、知恵の限りを尽くして建てるんだけれども
何せ一品限定生産モノだ。
「想定外」が無いとは限らない。



各分野で、全力を尽くし、
可能な限りのことは、する。

守るべき基準を守り、
検討すべき事項を確実に行い
設計〜施工〜監理〜検査の各段階で
適切に仕事を遂行する。



その上で、うまくいかないこと、ダメだったこと、
あって欲しくはないが、
想定外の事象や未発覚の不備のせいで事故が起こったら
「次」に活かすのだ。


そうやって、科学技術・土木建築は
発展してきた。

これからも、そうなのだ。



だからね、よけいに思うんだよね。

原子力発電所の不味さ。



試行錯誤、事故の経験を積み重ねざるを得ない科学技術において、
ひとたび事故が起きてしまったら
取り返しのつかない事象になってしまうモノだから。



広大な国土があって、
人里離れた場所に建設出来て、
事故が起きてもその一帯数百kmを封鎖してしまえば済む
そんな国なのであれば、まあ、良かろう。


でも、日本はそこまで広い国でもあるまい。



福島の事故後、
12年も経っているけれども
未だ原子炉の処置さえ全くできない。



毎年毎年、莫大な経費をかけ続けて
除染やらなにやら進んではいるものの
肝心要の汚染源の処置ができないし
方法も決められないし、
いつまでに完了するかの目算も立たない。



地震だ噴火だ台風だ大雪だと
自然災害豊かな国土には
相応しくない構造物なのだとしか
言いようがないのである。



どうして、経済畑の人や文系の人は
そういう発想ができないんだろう、と
いつも思うのだ。


技術って、完璧じゃぁ無いんだよ。


世の中、わからないこと、未解明なことばかりなのだよ。


「想定外」の巣窟なんだよ。



だからね、それも含めた判断が
必要なのだと思うのだよ。



「風評被害」なんて、
いくら批判しようが否定しようが
絶対に起こるのだ。


「イメージ戦略」をあれだけ説く経済界が
こと原発に関して大甘なのは
なぜなんだろうね。


やっぱり、あれ? 利権ってやつ?
(「ここまで造ったんだけどねぇ」おわり)
posted by けろ at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 建築工事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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