そりゃ、人を運び、モノを運び、経済を回すためじゃない?
そのほうが人や物の流れが盛んになって経済的に益となるからだよね。
だから、明治時代には、富国強兵・殖産興業の旗印のもとに
せっせと鉄道を造った。
山奥で掘り出した石炭を港まで鉄道で運び
船舶に積み替えて各地に届ける。
大量の重たいエネルギー資源を運ぶために
無くてはならぬインフラなのであった。
しかるに、現在。
人口密度の高い都市部では、
大量の人を効率よくせっせと運ぶために
鉄道は活躍している。
経済的にも効果が高く、
社会経済を回すために必須のインフラとして
位置づけられている。
のであるが、少し都心部を離れると、
乗る人は減り、貨物も減り、
人やモノの移動は、もっぱら自家用車やトラックなどに
依存するようになっている。
かつて隆盛を誇った鉄路は
動かせば動かすほど大赤字を垂れ流す
負の遺産と成り果てている。
「もう、維持できないよ」
鉄道会社も匙を投げ、
地元自治体がカネ出してくれなきゃ
廃止するしかないね。
そう宣言している。
そして、失われたウン十年を経て
少子・超高齢化に喘ぐ地方の町村に
鉄路維持のために拠出するカネなど、無い。
ただでさえ少ない税収を
地方交付税交付金で補填し、
税収は少なく、高齢者に対する医療費その他の
支出は増すばかり。
バブル期に遠慮なく造りまくった施設やインフラの
改修・維持・更新費もままならない。
そんな火の車の台所事情で
鉄路を支えるボランティアを
するだけの体力は、無い。
今、ロシアやウクライナで、
兵站に寄与する輸送手段として活躍が報じられるが
民生用の旅客・運輸としては
果たしてどんなものか。
これだけの自動車社会、航空機社会において。
鉄道150年を記念してか、
JR札幌駅には、こんなパネルがあった。
昔の路線図である。
ここに記されている路線名をすべて言える人は
相当に鉄分の高い方であろう。
白糠線が無いぞとか、湧網線が東線・西線に分かれてるぞとか
いろいろお気づきの方もおられることであろう。
あ、美幸線も無いし、羽幌線も繋がってないね、とか。
細かく見ていくと、結構いろいろ、ある。
現在の路線図と、比べてみてほしい。
デフォルメされてないし、駅名は主要なものしか書かれていないから
イメージが少々異なるが、
激減しているのはおわかりであろう。
そのかわり、千歳線のルートが変更されたり
石勝線が繋がったり
青函トンネルを経て北海道新幹線が出来たりしている。
が、これからもまだまだ減る。
留萌本線も廃止される。
事実上廃止状態だった日高本線が正式に鵡川以南が廃止され
しかし残った区間も危うい。
長万部〜小樽間の函館本線も、
北海道新幹線延伸に伴い廃止される。
室蘭本線、富良野線、根室本線滝川〜新得間、
花咲線、釧網本線も超赤字路線だ。
宗谷本線、石北本線だって、
いや、新幹線(じつはこの赤字がものすごい)も含めて
すべての鉄路が青息吐息である。
はあ。
石炭産業のように、廃れざるを得ない
時代の流れなのであろうか。
札幌駅周辺は、
じつはものすごい再開発ラッシュである。
新幹線駅開業時のイメージ図が添えられていた。
札幌駅からすすきの駅にかけて、
大型建築物が建替ラッシュの最中である。
すでに建て替わって開業している新ビルも何棟もある。
「鉄道ありき」の時代は、
すくなくとも終了しているのである。
ドローンなど、空中交通が発達していくと、
これまたあらゆる要素が激変することであろう。
戦争とか、疫病とか、天変地異とか、
そういうのが無ければ、ね。
それらが怪しい時代にも、
なってしまっているのだけれど。
(「鉄道の存在意義」おわり)