かつての停車場跡が、再現されている。
そしてほんの少しではあるけれど、
鉄路も保存されている。
そっか、昔は枕木が見えないように
埋められていたのであるか。
いちいち、このような看板があるのは
たいへん嬉しいものである。
じゃないと、「なんか、ただの古そうな線路」にしか見えないから。
どの程度が元の部分で、
どの程度が復元であるのか、
見ただけではよくわからないのだけれど
まあとにかく趣のある建屋である。
すぐ脇には、高層ビルが建つ。
そういう街だから、仕方がない。
と同時に、停車場の空間だけが歴史を切り取っている状態になっている。
部分的に、当時の石積みが掘り出され保存されている。
植物たちによって侵食されてしまうのは、これもやむを得ない。
ガラス部分は、当然当時のものではない。
以前は何らかの飲食店舗があった気がするが
コロナ禍のせいかどうか、閉鎖されてしまっている。
スロープとか階段とか、
あと付けの部分も多かろう。
裏側の建物もまた、
奥ゆかしいものである。
雨樋は、四角断面から丸断面へと変換されている。
古い部分を保存活用しつつ、
新しいものを付加して、現代の要請に合う造りとなっている。
外観すなわち印象に直接かかわるだけに、
なかなか難しい課題であろうと思う。
中に入れなかったので、
設備的な云々についてはよくわからなかったけれど。
ビル街の谷間にあるこの類の施設について、
人によっては趣を感じるし、
人によってはがっかり感を持つのかもしれない。
感性は、人それぞれで良いのだと思う。
そこにこそ、いろんな楽しさの源があるのだから。
(「停車場跡」おわり)