冬らしくてイイのか、勘弁してくれなのか、
その土地土地の状況にもよるだろう。
次々に低気圧がやってきて、
そのたびに大陸からの寒気団が南下してくると
たいていの日本海側では雪になるものだ。
低気圧の進行方向次第で、
ほんのちょっと風向きが変わるかどうかで
雪の積もり方は場所によって大きく変わってきて
ある時はこの地がドカ雪に、
またある時はこの地では晴れているのに隣町でドカ雪に、
そんな局地的な違いが出てくるものだ。
「○○地方は〜〜〜」なんて気象情報で語っていても
その〇〇地方の中でもずいぶんと状況は異なる。
「おお、京都もずいぶん積もったねぇ」
ニュース映像に「京都府」とテロップがついているから
よく見たら「舞鶴」だと。
ま、舞鶴なら、さもありなん。
京都市内とは、そもそも違う地なのだ。
さて、とある雪の日。
ロードヒーティング用の熱源機に燃料を供給すべく
大きな灯油タンクが据えてある場所があった。
灯油の指定数量未満の 950L タンクなのだろう。
防油堤とともに、ちょっとしたスペースに置かれている。
防油堤は、更に半分の 490L タンクなら無くても済むが
ある程度の灯油使用量があるならば
給油頻度を考慮すると大きくしたかったのであろう。
この防油堤、万が一タンクや接続配管から灯油が漏れた場合に
それを捕集して周囲に流れ広がらないようにするためのものである。
そうなのだが、液体を受ける構造になっている以上、
漏洩灯油以外のものも必然的に貯めてしまう。
雨が降れば、天水桶と化す。
なみなみと水を湛えてしまっていると、
いざ油が漏れた際には油のほうが軽いから
油が溢れていってしまう。
そうならないように、雨の度毎に水抜きが必要だ。
雪が降ると……。貯雪庫と化す。
降り始め、積もり始めの雪は
水ほど密ではないからして
防油堤としての機能はある程度残されよう。
しかしこのまま放置しておけば、
融解・凍結を繰り返して
いつしかアイスブロックが出来上がっている、
なんていう事態にもなろう。
タンクの脚なんかもあるから、
あんまりガチガチに固まってしまってからだと
そう簡単に除去できなくなってくる。
だから、早めに取り除かなくてはならない。
ならないけれど……。
それには人手が必要で、
それを誰がやるかとなると、普段のルーチンではないからして
なかなかに難しい面があったりする。
かくして、そのまま貯雪庫や製氷皿として
機能してしまう防油堤は、決して少なくないはずなのである。
これを防ごうと思えば、
屋根でも掛けるしかなくなるのであるが
建築面積に算入されてしまうし、そもそもカネがかかるし
屋外タンクにした意味が薄れてくるし。
この計画でも、建築確認申請は問題なく通る。
だから、そのままになる。
ま、ケンチクにはそういう事が多々あるから
そのうちの一事象でしかないのだ。
氷の塊で埋まった防油堤から灯油が大量に漏れ出して
周囲で著しい火災が生じて甚大な被害を齎すようなことがあると
消防法や関連法規や条例や所轄消防の指導が変わってきて
「防油堤には水や雪などが貯留しない構造にすること」なんて
規定が増えるのかもしれない。
ハード(施設)で備えるのか、
ソフト(メンテ)で備えるのか。
その違いなんだけど。
ま、極力リスクは減らせたほうが望ましには違いない。
できる限りは除排雪に努めるほうが良かろうて。
(「防油堤は貯雪庫じゃない」おわり)