良く訊かれた質問。
「機械室やパイプシャフトって、
延床面積の何パーセントくらい必要?」
確かに、何らかの資料を見ると、
統計資料としてそのような率が書いてあるものも
無いわけではない。
けれども建物なんて、それぞれが一品生産品で
設備システムもさまざまだから、何とも言えない。
どんな用途で、どんなシステムを採用して、
どんな使い方をするかによって、
グレードをどうするか、どのくらい隠すかによって
全然違ってくる。
そうとしか、言えない。
まあ、試験の場合だったら
「このくらいにしておけば無難」っていう線を
押さえておけば合格に近づくのだろうから
試験対策としてはそういうアプローチもあり得よう。
でも実際の建物の計画であるなら、
まずは前提条件からおさらいしていく必要があろう。
面積云々は、それからだ。
統計資料は、さまざまな実例の傾向を見るために
処理された結果であって、
個別の事情とはいささか異なるものであったりする。
30代女性の所得はどのくらい?
日本人の寿命は何年?
○○県人の体重は何kg?
たくさんの事例を集めて、平均したり標準偏差を取ったり
中央値を見たり、いろいろ統計処理すれば
何らかの数字は出てくる。
けど、個々の人間にピンポイントで当てはまるかというと
全然そんな事はない。
設備スペースに関する数字も、そんな感じだ。
こんな建物だと、
空調のための機械室やパイプシャフトのスペースは
無いのかもしれない。床面積としては。
熱源である室外機も、配管も、
全部外壁に貼りつけてあるのだから。
機械類を全部屋上や外壁に据えてしまって、
配管も全部屋外露出にしてしまえば、
機械室もパイプシャフトも要らない。
その外観を、意匠的に許容できるのであれば。
ポンピドー・センターみたく、
敢えて観せるという意匠も、あり得よう。
外壁に、蔦を這わせて、配管も這わせて、
あらすてき。
そういう感覚が社会一般に広く受け入れられるような
そんな日が来ることがあるのならば、
これでも良かろう。
ただし、台風の襲来が多いとか、
冬期は凍結するとか、
噴煙が常に襲来するとか、
そういう自然条件によって「露出」が望ましくない場合もあるので
何ごとも条件次第なのである。
でもって、いちばん影響の大きい条件が
「コスト」だったりするのかもしれない。
(「パイプシャフトが無くっても」おわり)