って、思います?
小平(こだいら)市には、確かに海岸なんか無い。
ムサビがあるだけだ。
(だけ、と言ったら怒られるか。すいません)
でも、小平(おびら)町には、確かに海岸があるのだ。
日本海に面した町なのだ。
海岸沿いに伸びる国道脇に、道の駅がある。
そこから、日本海を見渡すことができる。
(延々と続く国道沿いからであれば、どこからでも見えるけど……)
かつて、ニシン漁が大盛況だった頃には
多くの番屋が建っていて、賑わっていたという。
今も残されている建物は、貴重な歴史資料として保存されていたりする。
でも、それらの資料を見ると、
昔の人たちの過酷さを思わざるを得ない。
漁をするってったって、北海道だよ。
気温は低いし、水は冷たいのだ。
夏の海水浴場だって、寒くってずっと泳いでいられないから
浜辺で焚き火をして時々暖まりながら泳ぐっていうのだ。
そもそも、泳ぐのは主目的ではなくて
ジンギスカンなど焼き肉のついでに水にもちょっと浸かろうか、
そんな「海水浴」が盛んな地域なのだ。
真夏でもそんなだ。
春、脂の乗ったニシンを獲る頃は更に寒く、冷たいはず。
現代人なら、すぐ体調を崩してしまうだろう。
少なくともワタクシならすぐ死んでしまいそうだ。
結構いろんな碑やモニュメントが建っている。
今のような道路も自動車もない時代から
この地にやってきた人々、住み着いた人々の足跡を
現代に遺しているのだ。
松浦武四郎。
すごい行動力であったことが窺える。
沖縄の海のような、暖かさも、カラフルさも、
浮かれそうな陽気も、無い。
でも、心に染み入る風情が
ここにはあるように思うのだ。
(他の地にだって、あるんだけどね)
この街道を、レンタカーで、あるいはフェリーに乗せてきた自家用車で
疾走する来道者がいる。
時間と体力とを確保して、
真っ黒になりながら(北の地でも、紫外線はちゃんと降り注ぐ)、
自転車を漕ぐ人たちも、いる。
若い人が多いようだけれど、車窓から時々壮年の士も見かける。
大きなザックを担いで歩くツワモノも、少数だけれども見る。
すごいや。
隣の街まで、何十キロを踏破しなくてはならないような場所を
黙々と歩いているようだ。
カモメが、飛んでいる。
波の音が、聞こえる。
そんな、小平の海岸。
小平じゃない、小平。
こだいら じゃない、おびら。
(「小平の海岸」おわり)