鋳鉄製の放熱器。
蒸気暖房自体がどんどん減っているから
当然と言えば当然。
でも、たまに目にすると嬉しいものだ。
トイレの暖房として、随分と立派なモノがついていた。
五細柱700Hの床置形なのだが、転倒防止のために壁からも支持を取ってある。
足回りを中心に、だいぶ錆びてきているようだ。
数えてみると、29節が連結されている。
結構な放熱量になりそう。
右側の管から低圧蒸気が入ってきて、
ここで放熱して凝結して湯になり、
左下の放熱器トラップで還水のみ分離されて
恐らくどこかに置いてある真空給水ポンプへと引かれていく。
そこから還水槽へ送られ、
ふたたび蒸気ボイラで加熱・気化されて
全館へと送られていく。
そんなシステムになっているはずだ。
今でも 作っているところ があるんだね。
使っているところがあるのだから、
修理や更新の需要がそれなりにあるのだろう。
必要放熱量に応じて、節の数を選定 する。
カタログには三細柱とか二柱とか壁掛とか書いてあるけれど
一通り生産しているのだろうか。
そんな事はなさそうな気もする。
五細柱700Hだと、1節あたり 8.7kg ということだから、
29節で 252.3kg。
かなり重たい放熱器である。
どうだろう。
こんな立派なやつ、身近にあるだろうか?
上から後ろ側を覗いてみる。
壁にアンカーを打って支えてあることがわかる。
この金物だけはキレイだから、
耐震改修などに合わせて後から追加したものだろう。
250kg超のモノが倒れてきたら、
無事じゃ済まなさそうだから。
別の壁には、12節の放熱器がついていた。
けれど、随分と錆びてしまっている。
転倒防止金物と放熱器トラップだけがキレイ。
そこだけ取り替えていることがわかる。
本当なら、放熱器本体も錆取りをして
ペイントし直したかったところだろうけれど。
なにぶん、費用がかかることだし
見送ってしまったんだろう。
はんぶん産業遺産的な位置付けになりつつある、
鋳鉄製放熱器。
見られるうちに、よく鑑賞しておこうじゃないか。
(「鋳鉄製の放熱器は消えゆくのか」おわり)