毎年たいてい1つ2つは、やってくる。
そこで不思議に思うこともある。
「和風便器は1ヶ所ほしいなぁ」
そういう意見が、必ず出てくるのだ。
昔は、和風便器とか両用便器とかあったよ?
でも今どき、自宅に和風便器がある人は
かなり少なくなったんじゃないかなぁ。
古い家だって、そこに居るじっちゃばっちゃの足腰に悪いってんで
洋風便器に変えてるよね?
そんな中、なぜに和風便器を新設するん?
もちろん、設備設計者としてはお施主さんのご意向は
無下にはできない。
ご説明はするけれど、最終的にお決めになるのは
やはりお施主さんなのであるからして。
それで、和風便器を盛り込むこともたまにある。
さすがに、多くはないけれど。
古い便所を改修するってんで、
まずは古い和風便器を撤去する。
陶器を取って、モルタルも取り除くと
スラブに四角い孔が並んで開く。
それにしてもスラブ厚いなぁ。
昔むかしの湿式便所だったから、
分厚いシンダーコンクリートも含めて
こんな厚さになっちゃってるんだ。
縦管の鋳鉄管も、見る機会が減ってきた。
上の階で作業をする人が落っこちたら大変だから
ちゃんと板で塞いであるんだけど、
スラブ断面を見ると、めちゃくちゃじゃない?
鉄筋のかぶりとか、ピッチとか、ぜんぜん変だし
バツバツ切られちゃってるんだけど、
この辺全く引っ張り強度出ないよねぇ。
古い建物だと、こういうのは時々みかける。
「ザラにある」という肌感覚があるけれど、
あんまり不用意に下手な事は言えないよね。
耐震診断なんかで構造計算をしてるようだけど、
たぶんこんな配筋になってる前提では計算かけてないよね。
てことは、「耐震性がある」という計算結果は
机上の空論でしか無いのか……?
その辺り、非常に曖昧だなぁ。現状は。
さてこの開口部は、和風便器の撤去に伴って不要になるから
本来あるべき位置に鉄筋を差し筋して、コンクリートで塞いで
床の強度を確保しようとする。
元の配筋がこんなだから、何とも心もとない面もあるけれど
少なくとも穴埋めした部分は、周辺よりも丈夫になるはずだ。
結構な重量がかかるから、
コンクリートが固まるまでちゃんと下から支える。
ほとんどの和風便器は洋風化する。
それに伴って、トイレのレイアウトも一新する。
不要となった和風便器用の開口部は塞ぎ、
新設する洋風便器用の給水管、排水管の通り道には
孔をあける。
なんだけど、やっぱりここでも1ヶ所、
和風便器のリクエストがあったのである。
レイアウトが変わったから、既存の孔は使えない。
だから、新たにスラブに大きな四角い孔を開けることになる。
今どきだから、それなりの補強を込みで。
TOTOのカタログでもすっかり扱いは小さくなったけれど
一応まだ売っている。
売る程度には、需要があるということなのだろう。
ブースに対して、妙に奥についているなぁ。
そう思うかもしれない。
出来上がりを見れば、そう思わざるを得ないだろう。
どうやら、ドアと便器との間に梁があって、
ちょうどブースの真ん中になるような配置ができなかった、
ということのようだ。
設計図にも乗っていなかった小梁が
下階の天井を剥がしてみたら出てきた
……そんなことも、たまに無いわけじゃない。
予想のつかない「びっくり」が、
現場には溢れている。
だから、設備改修は面白いのである。
……大変だけどね。
(「今でも和風便器を設置したいって?」おわり)
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