実際に縁者が住んでいるという家の他に、
彼の実家が再現された、古い木造家屋が保存されている。
映画『旅立ち〜足寄より〜』 のロケセットとして使用されたという。
劇場公開が2009年というから、
撮影後十数年を経て更に老朽化が進んでいる。
北海道足寄町は、北海道の内陸部にあって
夏は暑く、冬は寒い、しかも相当寒い土地であるという。
吹雪ふき荒れる、氷点下20℃を下回るような中で、
隙間だらけのサッシと、断熱も入っていないであろう板張りの壁。
家の中でもモノが凍る、そんなところであったろう。
木柱に取り付けられた電灯も、おそらく仄暗く
雪中ではことさらに冷え込みを強調したことであろう。
雨漏りが酷くなったからなのか、
屋根にはブルーシートが貼り付けてあった。
何本も建てられた、煙突。
各部屋にストーブを置かないと、とても寒くて居られないだろうから。
軒側の煙突は、
屋根からの落雪により度々破損しているんじゃないだろうか。
雪割りなどの措置がまったくないのだけれど。
外壁にちょこっとついている電力量計はとても小さい。
今のように50Aとか60Aなんていう容量じゃないからね。
古い時代の建物を見ると、
現代の建築がいかに優れているか、
居住環境がどれほどに向上したのか
痛切に感じざるを得ない。
意匠、断熱、遮熱、構造、設備、電気すべての領域で
驚異的な発展を遂げているのである。
今の時代の日本人が
かつてのこのような住宅で過ごすとなると、
果たして生存を続けられるのか?
というレベルの話になるかもしれない。
100年後の人類が現代の住居を見て、
やはり同じように感じるだろうか?
感じるかもね。
スマホも携帯も無い30年前のことなど、
今の中高生には信じられないだろうから。
(「松山千春の家のロケセット」おわり)