そこには、配管たちがたくさん並んでいる。
ねずみ色のは、塩ビ管。
排水管として使用されている。
黒いのは、給水管。
鉄パイプなんだけれど、
結露して水滴まみれにならないように
保温材が被せてあって、更に防水布で巻いてある。
この黒い保温外装は、最近では使わなくなった。
こうやって、螺旋状に布を巻いていくのは
えらく手間がかかるし、時と共に緩んできたりするし、剥がれてきたりするし。
ピット内の排水管は、ふつうは保温しない。
配管吊金物が、サビサビである。
近年では、ピット内の吊金物はステンレス製とするけれど
これを造ったときは、そうじゃなかったようだ。
床上についていた衛生器具の位置を思い出しながら、
衛生設備詳細図のコピーを片手に眺めながら、
配管ルートを追っていく。
まあたいてい、図面とは違う位置に通っているんだが。
1m以内くらいの位置ズレは、ご愛嬌。
繋がりや分岐なんかが違っていても、まあよくあること。
図面に描いてある管が全く無かったり、
図面に描いてない管がいっぱいあったり、
それだって驚くほどのことではない。
だから、現地は調査せざるを得ない。
床点検口が歪んじゃって開かないとか、
委託費出せないから調査不要とか、
そんな理由で調査無し・既存図面だけを頼りに設計積算せよとの指令がある場合には
後から文句言わないでね、とあらかじめ念を押しておかなきゃならない。
「図面が間違っている」と怒られても、困るんだから。
ピットの外周貫通部には防水処置がしてある。
あの壁の向こうは土だから、貫通部の隙間から水分が流入してこないように
布を詰めたりモルタルを詰めたり、いろいろする。
水密装置もあるけど、結構高価だ。
場所によっては、排水管表面にも結露の水滴がついている。
ピット内だもの。湿気は高いよね。
だからこそ、金物類は錆びる、錆びる。
スラブ面まで湿っている感じなのは、なぜ?
上部床の防水がダメになっているかなぁ。
電線管やプルボックスも一緒に通っているけれど
そっちもところどころ錆びている。
概して湿潤環境であるようだから、やむを得ない面もある。
排水管は、勾配がなくちゃ流れていかないから
適宜うまく傾きをつけて配管しなくちゃならない。
基本的に45度、90度の曲がりの継手しかないから
それらを上手いこと組み合わせて、勾配を確保する。
系統ごとに水を止められるように
給水管のところどころには、バルブが取り付けてある。
どの系統のバルブか、わかるように札がつけてある。
ただバルブだけついていたってわかりゃしないから
絶対につけておくべき札である。
図面を見れば、わかるじゃんって?
図面が合っていれば、ね。
勾配が必要な排水管と
水が抜けるだけのちょっとした傾きだけあれば良い給水管とは
たまにお互いが邪魔になることがある。
給水管の保温材に、排水管が食い込んでしまっている。
配管を先にやって、保温はあとから行うから
めり込ませた状態に仕上げるのである。
いろんな職種の方々が入り乱れるから、
調整が難しいところも多々あって。
だから、そういうことなくキレイに納まっている現場があれば
そこに美を感じ、感動を覚えるのだ。
(「ピットの中の給排水管」おわり)
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