事情が許すならば、その地の「郷土資料館」的な施設には
足を運ぶようにしている。
なぜって?
その地の歴史に触れることによって
そこで育まれたさまざまな事象をより深く知り
現在を見据え、未来に思いを馳せるため……なんて高尚な目的は
もちろん「無い」。
単に、面白いから・楽しいからに決まってる。
そういう趣味なのだ。それに尽きる。
さて、えりも町に行ったのだから
そこでも同様なのであって。
木造の古めかしい建物であることも多いのだが
ここでは鉄筋コンクリートの比較的新しい(古い木造に比べれば、でしかないが)
建物が、資料館であった。
入口脇に、何の説明も飾りも意味もなく、
鹿の頭部が引っ掛けてあった。
FF式温風暖房機の給排気トップをガードする金物が
鹿角の据付金物として利用(?)されていた。
まぁ、燃えるもんじゃないから危険ではないのかも知れんけど。
また、横の方の引っ込んだところには、
灯油タンクやら、地上ころがしの灯油配管やら、
特製らしき換気用フードやら、
そんなものたちもひっそりと存在しているのだけれど
おそらく普段誰にも見られることはないだろう。
施設の愛称を「ほろいずみ」としているようである。
幌泉郡えりも町 だから、その郡名を冠しているようだ。
もっとも、北海道の町村において、「郡」にあまり意味はない。
一郡一町 も多い。
他の都府県では平成の大合併によってそうなった地も多いということだが
北海道では元々そうであった地が多いはずだ。
この建物は、常設展示室と、水産の館展示室とで構成されている。
入口左手の常設展示室には、町の地質や歴史に関するものが置かれているのだが
緑化に関する展示が興味深かった。
現在も継続して行われている植林活動によって
砂漠化していた地に緑が戻り、土砂の流出が抑えられ
豊かな海産物の育成へと繋がってきているという。
戦後すぐの頃は、「えりも砂漠」と呼んでも差し支えない
茫漠とした荒野であったというのだ。
一度なくなってしまった植生は、
常に吹き荒ぶ強風のため自然には回復することなく、
人の手によって長い時間をかけて再生されてきたのだ。
雑多な生活用品類が、見ていて飽きない。
どこに行っても同じようなものが、でも若干異なっているものが、
所によっては整理され、
大部分はただ脈絡もなく並べられていることが多いのだけれど、
そこがまた楽しいところでもある。
昔で言う古道具屋、今ならジャンクショップに足を踏み入れたような
えも言われぬ高揚感を持たざるを得ない。
西北海道と東北海道とがぶつかって、真ん中が盛り上がって、
現在の地形を構成している、らしい。
両側からの圧力によって褶曲し、
地層は水平ではなく縦方向に積層している。
建物入口右手は水産の館展示室であって、
水産関係のものが多く置かれている。
ごちゃごちゃ感満載だけれど、
それがまたイイのである。
コンブを縦に伸ばして展示してある部分は
結構な高さがあるのだけれど、
写真ではうまく表現できていない。
襟裳岬から南東へ、日本海溝に向けて日高山脈の延長が見て取れる。
その先、海溝の東側には、
いままさに引きずり込まれて沈まんとしている襟裳海山があるという。
昔の居間は、
やっぱり寒そうだ。
風の強い地で、断熱もない板張りの家の中、
このストーブだけで凌がなくてはならなかった人たちについては
現代からは想像もつかない。
当時の人たちにとっては、それが当たり前だから
特殊とは思わなかったのであろうけど、
現代人は、まあ、生きていけないレベルじゃないかな。
ボイラー室や、壁面ガラリがあるけれど、中は見られない。
見られないのが普通だし、
一般に見せるようなところじゃないんだけれど、
どうせなら見られたらいいのに。
公共の子供向け施設なんかだと、
敢えて機械室内を見せる造りにしてあるところもあるようだけれど。
展示台として流用されている、ファンコンベクター。
露出型でも良かったんじゃ?
天井埋込形も設置してあって、
とにかく暖房は強力にしたかったなじゃないかと。
ただ、天井点検口が見当たらない。
てことは、ここの天井裏のファンコンは
ノーメンテ、手つかずということになる。
大丈夫? なわけないよね。
フィルターなんざ、ホコリコーティングされて
ほぼ詰まってるんじゃない?
これだけ見られて、入場無料。
「ご自由にお持ち下さい」なんてプレゼントも置いてあって
とってもオトクな、資料館なのです。
(「えりも町郷土資料館」おわり)