2020年10月23日

旧三井銀行小樽支店のせつび

旧三井銀行小樽支店


昭和のはじめに造られた建物であるから、
その後さまざまな改修が加えられながらも
当時の面影を多く残している。


「せつび」について、ご紹介していく。



まずは、暖房である。

当時の表記としては、『煖房』であるが。


20102301.JPG


銀行営業室のカウンターの下部分に
鋳鉄製細柱型の放熱器が収められている。

銀行員が居る側には露出で見える。



顧客側には網が取り付けてあって、
直接触って火傷することがないように配慮されているようだ。


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たかだか「網」であっても、
現代のような無粋なものではなくて、
その枠に精緻な装飾が施してある。



金庫室前の壁際などは
ほんとうにそのままの放熱器。


20102303.JPG


火傷注意の標識は、もちろん後付け。

また、放熱器転倒防止用の壁固定金具も
後付けである。

建設当時は、こういう概念やモノが無かったはずだ。


接続配管は、おそらく何度か更新している。



応接室のような室の窓下にも
鋳鉄製放熱器が据えられている。


20102304.JPG


営業室のものよりも丸っこいフォルム。

窓下に合わせるため、背が低いものが使われている。


蒸気暖房の場合、蒸気配管が露出になっているのも
よく見られること。


コンセントや電線管の類は、
全部後付け。



放熱器に接続する蒸気(と還水)の枝管は、
隣の室のものと合わせてから床を貫通している。


20102305.JPG


蒸気管には勾配が必要。
写真で、若干の勾配がわかるだろうか。



窓の寸法形状に合わせて放熱器が配置されている。


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窓自体は、当時の意匠を保ちつつ、
断熱、網入りガラスにしたり、
現代の用に耐えるよう改修されている。



放熱器トラップ。


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各放熱器下部に1個、取り付けられている。



放熱器の表面には、製造社名が見て取れた。


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何度か塗装し直されてきたものであろうが
文字は読める。

AMERICAN RADIATOR CO,

M.I.W


建築概要書に書いてあった、

「米國アメリカンラヂヱーター會社製アイデアル、スモークレス汽罐」

ってやつかな。



放熱器トラップは、新しそうだ。


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そんなに長持ちするとは思えないからね。

圧力単位が、kPa 表示である。



立管から、上部横引き管へ。


20102310.JPG



蒸気管の人が触れそうな部分には
保温材を巻いてある。

「保温」というよりも、
火傷防止の「断熱」という感じ。

還水管も結構熱いはずなんだけれどね。



ファンコンベクターがついていた室もあった。


20102311.JPG


当時はこんなモノ無いから、
後付け、もしくは鋳鉄製放熱器からの置き換え。



エアコンなんかがついている室もあるけれど
ずいぶん古い型に見える。


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もちろん、後付け品だけれども。



ダクトで温風も送られているようで、
下がり天井と吹出口が見える。


20102313.JPG



ところどころの内壁には、
パスダクト。


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今どきは、こんな低い位置にはあまり見られない。



地下部分には、
湿気対策であろう諸設備が
たくさん付加されていた。


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エア搬送ファンも、ベントキャップも、
当時のものではない。

照明も、当時のものとは思われない。



コーナー部の壁に鏡があるのだが、
その下部は制気口にもなっているようだった。


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金庫室の周囲にぐるりと回廊があって
四隅の鏡で奥を確認できるようになっている。


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地下で、湧水や結露水もあったからだろうか、
側溝がぐるりと取り付けられている。



1階営業室上部には、
エアコンが取り付けられている部分もあった。


20102318.JPG


多くの観光客が訪れる施設としては
やはり必要なものであろう。

あっちこっちの電線管・ボックス類は
壁に合わせて真っ白に塗られている。



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火災報知器は、何度か取り替えられて
今に至るようだ。



照明のスイッチも
今のようなリモコンやタンブラースイッチではなくて
押し釦式。


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スイッチを1時間かけて手磨き……。



「電話室」なんてものもあって。


20102321.JPG


今は、ただの見世物であるけれど。



ヒューズ式ブレーカー(の残骸?)と
新し目の火報押し釦の対比が面白かった。


20102322.JPG



なぜか古いものが撤去されずに
残されていたり。


20102323.JPG



建物本体の造りや、
銀行のさまざまな室や
プロジェクションマッピングも大層楽しかったのだけれど
やっぱり「せつび」を眺めるのが一番楽しいかな。


いろんな歴史が刻まれていて、
いろんな想像をすることができて。
(「旧三井銀行小樽支店のせつび」おわり)
posted by けろ at 10:00| Comment(0) | 設備一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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