たいてい「ピット」という空間が造られている。
配管やケーブルなどを通す場所の一つとして
重要な意味を持つ。
ただし、設備屋さん電気屋さんによって重要ということで
他の人々にとってはただの「無駄な空間」と捉えられがちだったりもする。
この部分は、だいたい地面より下になっているから
いろんなところから滲み出てきた水が溜まってきたりする。
地下水位が高いか低いかによってかなり状況は異なるが
条件が悪いとかなり水が溜まってしまう場合もあるのだ。
ある程度の床面積がある建物であれば、
それらの水をまとめて排出できるように
ピット内には『釜場』が設けられている。
ある程度溜まってきたら、バケツで汲み出す……こともできるけれど
頻繁に床下を点検するのも大変だ。
それで、釜場にポンプを据えて
ある程度水が溜まったら自動的に排出するように
してあったりする。
長方形の釜場に、排水用水中ポンプを2台据えてある。
黒いケーブルは、ポンプへ電源供給するためのもの。
白いポールに、黄色いフロートスイッチが3個取り付けてある。
水位が上がるとフロートが浮き上がってスイッチが入る。
どんどん排水して水位が下がると、
フロートが垂れ下がってスイッチが切れる。
そういうやつである。
ポンプ1台起動、ポンプ2台同時起動、満水警報発出など
どのように制御したいかに応じて必要な個数を設置する。
青い配管の下に、それぞれポンプが接続されている。
常に水に接する管だから、防食のために青いテープを巻いてあるのだ。
別の釜場。
ここには、いろいろな場所からの排水が集められている。
ただ滲み出してきた水だけが溜まる場所ではないので
ポンプの起動回数はこちらのほうが多いだろう。
それぞれの排水管は結構錆びてしまっている。
下部にあるものなど、ボロボロだ。
こういう釜場は、ポンプの設置や交換、
状況確認がやりやすいように
床点検口の近くに設けてあると良い。
右下に、タラップが写っているのがわかるだろうか。
点検口の上から撮っているのである。
こういう位置関係なら、状況がすぐに確認できる。
ピット内の奥の奥の奥へ潜っていってようやく状況確認ができる……というのは
大変過ぎる。誰も見ること無く放置されてしまいがちだ。
それにしても、この黄色い排水、
一体どんな成分なのやら。
ただ、始めに書いたように、ピットとは
設備屋さん、電気屋さん以外の人たちにとっては
ただの無駄な空間でしかなかったりする。
点検や改修はそんなに頻度の高いものではないから
「無駄無駄無駄ァァァ〜ッ!!!」
と主張する強力な人物がいると、
床点検口の数を減らされたり
タラップが取りやめになったり
人通口のサイズと数が小さくなったりという
「減額案」の対象になってしまうこともある。
そんな憂き目に遭った古い建物は
現状把握も、調査も、改修工事も
いちいち大変になってしまう。
イニシャルコストを下げるために、
そこは甘受する……
まあ、そういう考え方も、一つである。
建設費は限られているから、
いろんな塩梅でコトが決められていくのである。
ピットの深さも、建物規模や設備システムによっても違うのだけれど
できれば1500mmは欲しいところ。
これも、コストや将来的な改修改装の自由度確保の有無など
諸条件如何によるのであるが。
最下階の全面をピットにせず、
トイレ下や廊下下部などのごく限られた範囲にとどめることもある。
ピットがとても浅いこともある。
ピット築造にかかる費用はとても減るのだが
設備系の立場ではものすごく辛いことになる。
どうしてもギリギリのコストダウンをしなくてはならない場合、
後世の弊害も十分に理解しておいていただきたいところ。
「そんなこと、知ったこっちゃない」
という態度は、やめておいたほうがよい。
(「ピットの中にある『釜場』」おわり)
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