いつだって気を揉むものなのだ。
たぶん、出来上がってしまったら
何の変哲もないただの事務室なんだろうけど、
その天井内では人知れず丁々発止の遣り取りが繰り広げられていた。
梁成の大きな、木造建築だけに
エアコンのカセット形室内機が梁間に収まるかどうか
かなりシビアな状況になっていた。
何とか、ほんとうに何とか、入っている様子がわかる。
エアコンだから、冷媒管にドレン管、電源と制御のケーブルが
接続されなければならない。
それらがギリギリ梁下を通過できるか?
そんな鬩ぎ合いが、ミリ単位で行われていたであろうことが窺える。
梁下で、天井仕上材の上で、
何としても冷媒管を通過させるために……
ドレン管には勾配が必要だから、
これまた難題である。
たとい天井内が如何様であったとしても、
天井下地が取り付けられ、天井仕上材が美しく付いてしまえば
ただの「室」にしか見えなくなる。
そうなんだ。
設備屋さん、電気屋さんの苦労は
いつだって「人の見えないところ」にあるんだ。
設計者も、時間的制約の中で、限られた情報の中で、
それなりに考えはするんだけれど、
実際に実現に至らせなければならない、機能させなければならない、
現場職員と職人さんたちの汗と涙の結晶には遠く及ばない。
テレワークできない職種にこそ、価値が詰まっているのである。
と、痛感するのである。
(「ギリギリ収まった!?」おわり)