会社名はカタカナで書いてあるが、創業者の姓がそのまま使用されているのである。
「トヨタ」「スズキ」「ニッタ」などと同じ、かな。
旧北海道拓殖銀行小樽支店の建物は、改装されてホテルとして使用されていた時期もあったが、現在は美術館となっている。
展示されている美術品とともに、建物自体が美術的価値を持つ歴史的建造物として保存されている。
公営ではなく、一企業によるものである。
メセナ と言えるような気もするのだが、 協議会 のメンバーではないようだ。
この美術館の向かい側には小樽郵便局が建っている。
こちらはかなり新しい建物なのだが、周囲にある建物を意識した意匠となっている。
エントランスを入ると、チケットカウンターとミュージアムショップがあって
そこから展示室へと入っていく。
最初の展示室は、 ルイス・C・ティファニー ステンドグラスギャラリー である。
あの「ティファニー」創業者の息子なのだそうだ。
床面には、元々の建物の意匠と思われる地図などが残されている。
神々しいばかりの鮮やかなステンドグラスが、
展示室いっぱいに並んでいる。
アメリカにおけるアール・ヌーヴォーの第一人者、ということで
かなり複雑な技法が組み合わされている作品群である。
(ニュー・アート、って言わないんだね、アメリカなのに)
普通に「ステンドグラス」と聞いて連想するような、
のっぺりした色彩ではなくて、
濃淡やグラデーションのある、不思議な表現がなされている。
平面ですら、ない。
立体的なガラス表現になっているのであった。
こんな色合いは、一体どうやって出しているのだろう?
天使の羽根部分を表現するために、
一般的な「ガラス + 描画」という手法を取ると、右側のような仕上がりになるが、
ティファニーの技法によれば、左側のようになる、というのである。
平面だけではなくて、立体的なガラスを使用し、
いろいろな彩色を施したものを幾重にも重ねて
光の透過具合を計算に入れた表現をしているのだという例が
展示されていた。
1枚のガラス、ではなかったのである。
非常に凝った造りなのであった。
北海道の地方都市に、これらが所蔵されているのである。
2〜4階の絵画と彫刻は、撮影禁止である。よって、画像はない。
ぜひご自身で訪れて確かめてみていただきたい。
1階のステンドグラスも、WEB上ではとうてい伝わらない
現物の迫力があるものであるが。
この建物の階段も、味わい深い。
昔の、人造大理石の仕上げとなっている。
地階の アールヌーヴォー・アールデコ グラスギャラリー も
撮影可能だ。
(撮影可能場所も、フラッシュは禁止であるが)
さまざまなガラス細工が、数多く並べられている。
地震が、心配だ。
だが地下だから、少なくとも地上よりは揺れが少ないはずだ。
ランプの類の豊富なことと言ったら……。
総額一体幾らになるのやら、などという野暮なことは言うまい。
(言ってる……)
入館料は、一般1,500円である。
国立博物館の充実度と比べたら高いと感じられるのかもしれないが、
民営であれば十分なのではないだろうか。
「小樽芸術村」 の3館共通券であれば 2,000円 なのだ。
十分にその価値があると言えよう。
各地には、地元の名産・特産だけではなくて
このような形の施設が点在している。
時間のゆるす限り、見て回りたいものである。
やはり、人生は1000年くらいあっても、足りないだろう。
(「似鳥美術館」おわり)