壁があったりする。
「天井内には壁なんかなくったって構わないだろ?」
そう思う人がいるかもしれない。
天井よりも下の部分だけに壁がある、
そういう間仕切りもあるのだけれど
壁が有る間仕切りも、存在するのである。
なぜ?
たとえば、防火。
ある部屋で火事が起こっても、
上部のコンクリートスラブまで
天井内にもしっかりと耐火の壁があれば
隣の部屋には延焼しなくて済む。
そういう「防火区画」を形成するために
天井内までも壁を造るのだ。
ある場所で点検口をあけてみると、
確かに壁がある。
ブロックを積み上げて造った壁である。
この壁を、ダクトが貫通している部分には
見づらいけれど「防火ダンパー」が設置されている。
せっかくの防火用の壁なのだけれど、
貫通しているダクトの孔を通じて火事が広がるかもしれない。
それを防ぐため、温度ヒューズ付のダンパーが設けられていて、
一定温度以上になるとダクト内部で閉鎖されるようになっているのだ。
防火ダンパーは、fire damper から、図面上FDと表示される。
なぜか「エフ・デー」と呼び慣わされる。
「D]を「デー」というのは、相当昔の習慣なのだと思うのだが。
もちろん、「エフ・ディー」と発音する人もいるのだけれど
まだまだ多数はではないような気がする。
ダクトだけではない。
配管だって貫通させる必要がある。
金属製の配管(たとえば配管用炭素鋼鋼管)ならば、
貫通部分の配管と壁との隙間をモルタルなどで埋めておけば
それで済む。
火炎が配管の中を延々と伝っていくことはないのだから。
ケーブルの場合、被覆材が燃えてそれが伝わるのを避けるため、
貫通部分の前後1mは金属電線管に通すことになっている。
上が屋根で、右が外壁である部分の天井点検口を
開けてみた。
ファンが吊ってある。
ダクトには風量調節ダンパーが接続されている。
これは、volume damper から、VD(ブイ・デー)と呼ばれる。
「ヴィー・ディー」と発音するのは今のところ聞いたことがない。
「あさひの『あ』」「いろはの『い』」というように、
ただ普通に読むだけじゃ伝わりにくい場合に、
特殊な言い方をするものである。
その類の「伝達方法」の一種じゃないかと思うのだ。
「エフ・デー」
「ブイ・デー」
「エム・デー」(MD:電動ダンパー)
のように呼ぶことで、聞き間違いをなくそうという意識が
かつてはあったのだろう。
CD(チャッキダンパー)については
「シー・デー」でも良さそうなものだけれど
あんまり聞かない。
「シー・ディー」というと、音楽盤のように聞こえる。
(ほんとはこれも「スィー・ディー」であろう)
だからなのか、「チャッキ」と聞くことが多いように思う。
屋根と外壁とに接しているため、
機器やダクト用の「吊り棒」にも
断熱材が吹き付けてある。
ここから結露して天井にシミがつくのを防ぐ効果がある。
とにかく。
天井の中を覗くのは、なぜか楽しい。
いやいや、無闇矢鱈に開けて覗いて回っている変態なのではない。
ちゃんと、調査目的で、必要性があって、開けているのである。
が、調査ついでに、ちょこっとだけ、観察しているだけなのである。
そこんとこ、誤解なきよう。
天井の中にまで壁がある理由について、
「防火」しか言及していないじゃないか。
まあそれが一番の目的(というか、法律の要請)なのだが、
「防犯」としても意味がある。
マンションやホテルで、
天井点検口を通って、天井づたいに隣の室へ……
なんていうことがあったら困るのだ。
事務所ビルで、隣のテナントと天井内ツーツーだと
困るのだ。
逆に言えば、そういう必要性の無い室であれば
天井内には壁がなくて、
天井点検口から天井内に潜り込めば
隣の室に入れてしまうということもある。
貴重品や機密事項などを扱う室の場合には
そのあたりも気をつけなければならないのだ。
(「天井の中で壁を貫通している」おわり)