集合住宅にエレベーターがついているのは当たり前で、
現代では各階に停まるのは当然のことなのであるが。
かつては、そうではなかったようだ。
たまに、こんな建物を見ることはないだろうか?
6階と10階だけ、壁面が出っ張っている。
共用廊下が、この2フロアにしかないのだ。
エレベーターの停止階が、1、6、10階の3フロアだけなのだ。
他の階は、階段室を通じて上り下りする。
エレベーターの乗降口を作るコストと、
共用廊下分の床面積とを削減するための措置なんだろう。
おそらく停止階の室は、他の階よりも高く売れたであろう。
エレベーターシャフト頂部に設けるエレベーター機械室と、
更にその上に設ける高架水槽室も
現代では設けられないモノである。
米とか牛乳とか根菜類とか、
重たい荷物を運ぶのに、
階段しか使えないのはキビシイ。
そういう人は、少々高額になっても停止階の室を買う。
健脚に自身のある人であれば、
階段利用になるけれども割安な階の室を買う。
そんなふうに選択していたのだろう。
ただ、35年ローンなどを組んで購入して
やがて人間は齢をとっていく。
そのときに果たしてどうなるのか
なかなか思いが及ばないものであろう。
ある程度の値段で売ることができれば
住み替えもできるのだろうけれど。
現在当たり前に売られている集合住宅も、
時代が進むと「あり得ない」と思われてしまうような
仕様であることもあろう。
先のことは、なかなかわからないものだ。
(「エレベーターの停止階が限られていると」おわり)