2016年に登録された「ル・コルビュジエの建築作品」である。
7カ国17作品、他国にまたがる世界遺産の一部である『国立西洋美術館本館』
特に建築に携わる人たちにとって、「上野と言えば……」という建物のはずだ。
けれども、ワタクシにとっては「上野と言えば」科博であったので
いっつも前は通るけれども「ふう〜ん、これだよね」という程度の存在であった。
まあそれでも、永きにわたってその名前が出てくるフランス人だ。
観ておくのはやぶさかではない。
え? スイス出身であったのか。
Le Corbusier は、本名ではない? なんと、ペンネーム?
本名は、Charles-Édouard Jeanneret-Gris
ジャヌレ=グリさんでしたか。
まあそれはさておき。
有名な、あまりにも有名な、ファザード。
いつも多くの人たちがやってくるようだ。
入退館は、1階からである。
2階への動線階段は、閉鎖されている。
当初のオペレーションでは使用されていたのであろうか。
いろいろと、現行法規に適合しないのであろうか。
何てことない建物だったら、
とっくに除去されていたかもしれないが
名だたる「建築作品」の1つとあってはそうもいくまい。
今流行の外装ではないけれど
「世界遺産」だと言われて見れば
なんかスゴイように見えてくるものだ。
そのあたりのセンスは、からっきしなので仕方がない。
築後60年を経ているのだから、
いろいろと手が加えられている。
脇に増築されている部分を見て取ることができる。
裏手に回ると、「搬入口」が設けられている。
令和元年度の一級建築士試験「設計製図の試験」課題は
「美術館の分館」である。
見学者視点ではわからない、バックヤードについて
「本館」と「分館」という役割分担から研究して臨む必要があろう。
そういえば、ワタクシが製図試験に合格した際の課題も
「美術館」であった!
入館後、まず「本館設立の経緯」に関するパネルがあった。
60年も前の建築であるから、少しずつ手が加えられていて
原状と異なる部分が多々存在する。
それに関する説明もあった。
後でみたら、ぶれていて申し訳ない。
なんとなく、雰囲気だけ。
左半分は、読めるだろう。
そして、世界遺産に関する説明。
日本語でも「ル・コルビュジエ」の表記はなかなか苦しい。
中国語も、かなり難しそう。
かの、19世紀ホール。
円柱と梁とが特徴的なホールである。
設備系は、ほぼ違うものになっていることだろう。
煙感や防火シャッターは
元々か? 後付けか?
常設展示回廊のところどころにある階段は
使用されていない。
たしかに、現代の公共建築物の動線としては
いささか危険であろう。
非常階段として隔離された階段も。
DPG工法なんて、当時なかったわけだから
当然後付けなわけで。
中庭を望む。
ただ実用的なだけの建築物は
60年も経つと取り壊されてしまうのであろうが
世界遺産の作品となればしっかりと保存される。
向こうに見えるアンテナや高置水槽は、気にしないことにしよう。
こっそり愛でるだけだ。
このあたりは、もともとピロティだったところかな?
今回はじめて入ってみて
「建築作品」という視点で見てみて
なぁるほど、と興味深く感じた。
建築家の意匠屋さんにとって「せつび」が視界に入らないモノであるが如く
せつび屋であるワタクシにとって、「ケンチク」は意識に留まりづらいモノであった。
けど、ちゃんと意識して目を留めるなら
それなりに印象に残ってくるものなのだな、と。
その深度はともかくとして、ね。
建築士試験の「功」の部分ではあろう。
建築物は、3通りの見方ができておもしろい。
建築物そのものの在り方について。
建築物の用途の即した機能性について。
それらを裏で支える諸設備について。
もちろん、いくらでも視点を広げることが可能であって
・時代背景と思想信条による歴史的変遷について
・建築法規、消防法規との確執
・バリアフリー
・維持、補修
・中で働く人たちにとっての在り方
・異文化、多文化との接点
そういう観点も持てるし、
建築士の製図試験を意識して、
・建築としてのプログラム
・人とモノの動線
・バックヤードとの関係性
などを意識して歩けば、そういうモノも目に入ってくる。
日本中、世界中に、
見るべきモノが有りすぎて困るほどだが、
まあとにかく人生飽きている暇がない。
国立西洋美術館も
やっぱり楽しいところだった!
今回はちょっと駆け足であったから
何度か通ってみるのもよさそうだ。
(「国立西洋美術館の建物」おわり)