鉄板の蓋らしきものが見える。
「らしきもの」ではないな。
まさしく、蓋である。
蓋は、開けられる前提で設けられている。
よその蓋を勝手に開けてはいけないが、
正式な調査の一環であれば、
もちろん問題のあろうはずがない。
だから、開ける。
中には、
ロートでヒーティング用のヘッダーが
入っているのがわかる。
これは、ヘッダーボックスであったのだ。
太い2本の金属管が、
ヘッダーである。
往き用のヘッダーと
還り用のヘッダーと、で2本。
融雪用の温水が、
樹脂感を通ってたくさんの系統で送られていき、
雪を融かして戻ってくるのである。
凍りついてしまっては役に立たないから
送る温水は不凍液回路である。
エチレングリコールなど不凍素材の水溶液を使用する。
40%とか50%くらいであろうか。
シベリア奥地とか、厳寒地であればもっと濃くしないと
ダメかもしれないけど。
ヘッダーボックスの手前に、
マンホールがあったなぁ。
これも、開けてみる。
いや、これも無闇矢鱈に開けてるんじゃなくって
調査の一環なんだってば。
植物の根が、侵入してきている。
葉っぱが溜まっている。
蓋に繋がっていたはずの鎖は
錆びてしまって、とうに切れている。
開けるのに苦労するマンホール蓋も多い。
マンホールフックと金槌(ガンガン叩くのよ)とバールでは
どうにも開かなくって、
特殊器具を持ってくるしかないようなやつもある。
本来は、そんなことにならないように
定期的に開けてやればいいんだけれど
忘れ去られていることも少なくない。
いや、ほとんど意に介されていないのが実情だ。
設置後ウン十年間放置されたままのマンホールの中で
いろいろな事件が起こっていることも有り得るのだ。
いいだけ放置されたあと、
改修設計なんかが必要になって
四苦八苦しながら開けてみる必要性が出てきたりするのだ。
零細設計事務所の装備では如何ともし難く
心許ない「完成図」を信頼して(という言い訳にして)
あとは施工する方々にお手間を取っていただくことも
時々ある。
世の中にゴマンとある「せつび」ではあるが
それぞれに個別の経緯と事情とがあって
見るものを飽きさせない。
そういうものを見るのが趣味であるからして
この仕事はワタクシの性分にとても合っているのではないかと
思っているのである。
(「ロードヒーティングのヘッダーボックス」おわり)