えらいことになっている。
安全に関わることだから
捨て置くわけにはいかないのだ。
天井の中は、
普段見ることがない。
だから、気が付かない。
そうすると、手抜きであったり
知らないから、やらなかったり、
そういうことも起こりうる。
建物は、基本的に一品生産品だから
『完璧に』仕上げるのはとても難しい。
同じものを大量に生産する家電や自動車のようなものでさえ
時々不良品が生じてしまう。
一品限定で、それぞれが違う造りになっている建物の場合には
しかも、建てたあと改修やリフォームを繰り返しながら
永年使用するようなモノの場合には
良い状態を維持するのは、相当意識していないと難しい。
ちょっと、天井の中を見ていただこう。
画像下側にあるのが、天井板である。
前方に、縦の鋼材が何本も立っている。
この部分は、壁なのだ。
天井よりも下の部分では、
この鋼材の両面に板を貼って壁としている。
しかし天井の中までは壁が無くたって構わないから
鋼材だけ出ている。
鋼材自体は、上部のコンクリートで固定したいから
伸ばさざるを得ないのだ。
ただし。
あっちの部屋と、こっちの部屋との間に
防火性をもたせようと思ったら、このままじゃダメだ。
向こうの部屋で火事になった時、
天井内を伝って、延焼してしまうから。
それを避けたい場合には、
天井の中にもボードを貼って
ちゃんと区画する。
そうすると、こんな感じになる。
左右逆なのは、申し訳ない。
全然違う建物の写真だから。
天井面から、上のコンクリートまで
しっかりと耐火ボードを貼ってあるから
向こうの部屋で家事になっても
こっち側までは燃え広がらない。
絶対に来ないわけじゃないけれど
1時間くらいは余裕で耐えられるから
その間に逃げることができる。
建物の用途や、防火計画・避難経路などをもとに
『防火区画』とか、『防火上主要な間仕切り』とか
そういう『区画』を設けて
火災による人的被害を防止しようとするのだ。
壁がコンクリートであれば、
もちろん簡単には燃え広がらない。
ただし、その壁を空調や換気用のダクトが貫通する場合がある。
ダクトの中を伝って火災が広がってはマズいから、
貫通部分に、温度ヒューズでダクトを閉鎖する「防火ダンパー」を設ける。
そうすれば、大丈夫だ。
「防火ダンパー」は、ちゃんとした性能を持っていることが証明されたものを
使わなければならない。
BCJ認定マークのシールが貼ってあることで、
それを確認することができる。
鉄パイプのような不燃性の管が貫通する場合には
隙間をモルタルで埋めればよいのだが
エアコンの配管のようなものが貫通する場合には
「区画貫通処理」を行う必要がある。
この処理にはいろんな方法があるけれど、
BCJ認定の材料を用いることが多い。
ちゃんと、認定マークのシールが貼ってある。
新築のときに、防火区画のボードを天井内に貼っていないとすると
それは「違反建築」である。
平時にはわからないけれど
いざ火事となると、被害が生じてしまう。
そのあたりが「手抜き」されていたとすれば
それは重大な違反なのである。
区画貫通処理や防火ダンパーが設けられていない場合も
同様だ。
気をつけなければならないのは、
建物を使ううちに、いろんな必要に応じて改修する場合。
こんな建物があった。
せっかくの、防火壁。
天井内にボードが貼ってあるのに、
何かのケーブルを通すために穴を開けてしまっている。
穴を開けた後、ちゃんとした貫通処理をしてあれば構わないのだけれど
ケーブル保護のための細い塩ビ管を通してあるだけで
防火上の対策が行われていないのだ。
これは、マズい。
天井点検口の近くにあると、よく見えるのだけれど、
近くではなくなってくると気づきにくくなる。
向こうの方に、やっぱり穴が開けられているようだ。
さっきより大きめの穴に、ケーブルが2本通してある。
天井の中のことだし、
実際に火事にでもならない限りは
誰も気づかないし、困らない。
でも、消火器や消火栓や非常照明や誘導灯や
耐震構造などのように
イザというときのための造りなのだから
ちゃんと出来ていないといけないものなのだ。
普段利用している建物は
一体どうなっているのだろうか?
あんまり気にしすぎると
どこにも行けなくなってしまうかもしれないけど。
(「天井の中の防火対策」おわり)