東京電力福島第一原子力発電所の南方にある自治体である。
この地に、『楢葉遠隔技術開発センター』という施設がある。
福島第一の事故を、何とか片付けなければならない。
そのための対策の一環として建てられた、研究施設である。
詳細は上記のページを見ていただくこととするが、
この施設は見学したり実験等に利用したりすることができる。
・研究管理棟
・試験棟
の2棟の建物があり、いろいろな研究・実験が行われている。
福島第一原発では日夜ものすごい労力と資金とを投入して
除染、解体、収束作業が行われている。
しかしながら、事故後8年になろうとしているにもかかわらず
近寄ることすら出来ない部分も残されている。
原子炉から溶け出た燃料デブリがあるあたりである。
未だに注水が続けられ、冷却をしているのであるが
燃料格納容器が破損しているために、冷却水はどんどん漏れている。
まずは何とかして、それを塞ぎたい。
塞がないことには、汚染水は増える一方だし
燃料デブリの取り出しや炉の解体など
先に進んでいかないのである。
そのため、いろいろな分野において
必要と考えられるあらゆる措置を
研究・開発しようとしているのだ。
この施設、撮影不可の部分・場面も多いが
許可されている範囲で撮ってみた。
研究管理棟2階にある『VR室』
原子炉の設計図や、ロボットを投入して探査した状況を元に
VRシステムを作り、来るべき現地作業の予行演習が出来るように
備えている。
ロボット探査が出来た範囲においては
かなり詳細な状況がわかる部分もある。
ヘルメットの照明を当てるとこんな感じに見える、
振り向いたらこう見える、
このルートなら資機材が搬入できそうだ、
そんな検討を行うことが可能になる。
どうやらベント管に穴が空いているようなのだ。
8年経っても、詳細な状況はまだわからない。
この凹んだ空間に
VR画像を投影する。
ゴーグルをつけて見ると、
現地に居るような感覚を体験することが可能である。
もう一つの建物の、実験棟。
かなり、でかい。
搬入口も、ものすごく大きい。
換気用のフードも、相当大きなものである。
たわんでしまわないように、
内部に補強鋼材があるのがわかるだろうか。
施設内部は、撮影禁止である。
が、施設のページで3D画像を含めて公開しているものがあるので
そちらをご参照いただきたい。
雰囲気は、十分にわかるはずだ。
原子炉格納容器とベント管の実物大モックアップを造って
水セメントを注入する実験を行ったりしていたそうである。
人間が点検するために造られた発電所内の通路や階段を通っていけるよう
ロボットの開発も進めている。
本来であれば、事故など起こらないうちから
そもそも、建てる前から
そういった機材があれば良かったのに、とも思う。
事故自体が、全くの想定外だったことが、
このような状況からも窺える。
でもね、人間が造るものに
完璧はあり得ない。
ものすごい数造り続けられている自動車だって
決して事故は無くならない。
飛行機も、すごい数のトライアンドエラーを経て
安全性が高まってきていることは確かだけれど
それでも必ず事故を起こす。
原発なんて、
世界中で自動車や飛行機ほど造られてはいない。
たいしたトライアンドエラーを経てきていない。
事故は、起こって当たり前なのだ。
あとは、程度がどうか、というところだろう。
国土が広くて人口密度が低ければ、
いっそ「放棄地」にしてしまえ、という究極的リスク管理も
あり得るだろう。
でも、日本でそれを許容して良いものか?
まあ、原発政策に関しては
諸氏いろいろなご意見をお持ちである。
「本当に安全なんだったら、電力消費地に近い東京湾に造ればいいだろう」
「いやそれでもリスクは少しでも少ないほうが良いのだから
過疎地に立地するのは合理的だ」
「つまり田舎者はリスクを甘んじて受けよと?」
「その分、多額の交付金が当たるでしょ!」
昔から、言い尽くされてきた感もある。
徐々に再稼働する原子炉が増えつつある現在。
原子力発電所は、この国に必要なのだろうか。
いや、あって良いのだろうか?
国民一人ひとりが、
もうちょっと真剣に考えなくちゃならない気もするのだ。
イメージ戦略で物事を決めるべきじゃ、ないのである。
報道や書物だけではわからないことに触れたくて
現地を訪れることにした。
百聞はなんちゃら、だ。
もちろん、ワタクシの理解力、感受性は限られているし
機密事項に関しては、知る由もない。
それでもそれでも、
見もしないよりは、見たほうが良いだろう。
そういう思いで、福島県入りした。
事故が起こってから、収束の技術を開発しなくてはならない。
困ったことではあるが、
放っておくわけにはいかない。
遅ればせながらであっても、開発していくしかない。
研究開発に関わる方々も、
とても、苦しい立場なのだと思う。
ところで。
実験棟の向かいには、
でっかいパネルタンク。
惚れ惚れするような、輝くタンクである。
じつは、センターの道を挟んで向かい側に
ベルテクノの工場が立地している。
ふつうの建築設備では
この大きさのタンクには
なかなかお目にかかれない。
実験棟もすごいけれど、
結構こちらも眼福なのである。
(「楢葉にある遠隔技術開発センター」おわり)
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