2018年09月29日

原子力発電所再稼働への疑問

今日は、長い。そして、まとまりに欠ける。

はじめにお断りしておく。



北海道全域(離島を除く)でブラックアウトが生じた。
それに関して、各所で喧しい。

ワタクシなりに、いろんな疑問が生じている。

どこかの誰か、頭脳明晰で知見に富み、
辛抱強く懇切丁寧に説明できる御仁はおられぬか?
疑問に答えては下さらぬか?


口角泡を飛ばして激烈に罵り
誹謗中傷と人格攻撃と差別用語の連射で
見解を異とする者をやり込めようとする連中はお呼びではない。



原子力発電所が稼働していれば、ブラックアウトは防げたのか

「泊原発さえ稼働させていれば、こんな事にはならなかった」説を主張する方、

「泊が動いていてもなっただろうよ」説の方、

電力関係に詳しい方、詳しくない方、
経済方面に詳しい方、詳しくない方、
それぞれの方々が、いろんな「証拠」「データ」を持ち出して強硬に主張する。


たいていの一般人は、それらを検証する術を持たない。

すると、「何となく不安」くらいの根拠で

「冬、電気が無くなるなんて恐ろしい。だから、原発を動かして」

「泊の近くで地震が発生して今回の苫東厚真のようになったら大変だから、原発を動かさないで」

それぞれの思いの丈を述べるしかなくなる。



そうじゃないんだ。

政治的信念だとか、イデオロギーだとか、そういうこととは関係なく
学術的に工学的に論理的に原理的にどうなのかを知りたいのだ。
イメージなんか、どうでも良いのだ。
右とか左とか、親中とか親米とか、
売国奴とか経済至上主義とか陰謀とか、
そんな事は訊いちゃいないんだ。


だれか、信じるに足る「証拠」「データ」に基づいて、
真っ当な説明をできる人は居ないだろうか。

「泊原発が稼働していたら、ブラックアウトは防げたのか?」



そのためには、今回どのような経緯でブラックアウトに至ったのか、
完全に理解していることが重要であろう。

原因を把握できていないのに、
「原因は◯◯であると考えられるから、□□だ!」なんて言われても困るのだ。
それじゃあ判断しようがない。

誰か、教えて!



福島第一原子力発電所の事故の原因は何なのか

東北の震災から、7年半以上経つ。

結局、あの事故の原因は何だったのか、
誰か完全に把握しているのだろうか。


津波による電源喪失が原因だと言われているようであるが、
それは本当なのか。


なんでそんな風に訊くかと言えば、
その結論に至った経緯が、理解できないからである。


建物だって、乗り物だって、
事故があれば現場調査をするのだ。

いろいろ推測は出来るかも知れないけれど、
実際に事故現場を調査して、
その推測に誤りは無いか、
現場に何らかの別の見解を生じさせる事象は無いか、
確かめなければならない。


では、福島第一原子力発電所はどうか。


確かに、周辺はちょっとずつ片付いてきていることだろう。
徐々に、わかってきている事もあるだろう。

でも、事故後7年以上経つのに拘らず、
メルトダウンしているのではと言われる炉心を
誰も調査できていない。
調査できる見込みも無い。

ほんのちょっと、ロボットにカメラを付けて調べようとしてみたけれど
すぐ壊れてしまってダメだったのではなかったか。

その程度の調査で、
全貌を完全に把握できたというのか。


想定外の原因は、絶対にあり得ないのか。
あり得ないと言うなら、そう言い切れる根拠は何なのか。
そもそも、ああいう事故はあり得ないのではなかったのか。
なのに、起きてしまったのではないか!


碌な調査もせずに結論を出すのは
科学的ではないのではないか。

そのような態度は、
科学技術を冒涜するものではないのか。

7年じゃ足りなきゃ、
一体何年経てば、調べられるのか。

でも時間が経てば経つほど、
現場の状況は変化してしまって、
本来の証拠は失われてしまうのではないか。

これらのことを、
一体どう考えるのか。


事故原因について、
したり顔で説明する人たち、
答えてはくれまいか?


津波と外部電源喪失に対処したから
改修後の原発は再稼働して問題無いと言う人たち、
なぜ原因は本当にそれだけだと信じられるのか?

その根拠は詳らかにしていただきたい!



原子力発電所の安全性とは何なのか

原発に関して、
「安全厨」なる言葉が出来た。

安全、安全と気にし過ぎて頭がオカシイやつ、
というニュアンスであろう。

「絶対安全」などあり得ないのだから、
どこかで折り合いをつけよ、ということのようだ。

では、どこに線を引くのが妥当だと考えるのか。



地震雷火事親父のほか、
台風津波ミサイル攻撃テロその他
リスクはいろいろあるわけであるが、
どのリスクには備え、
どのリスクは仕方がないと諦めるのが妥当と考えるのか。

説明しておくれ。



燃料コストが
電気料金が
経済成長が
国際競争力が

そういうのは、後の話だ。

まず、リスクについて、
どのように考えるのか、
はっきり述べておくれ。


そして、それぞれのリスクについて、
どのように対処(or対処しない)を考えるのか
見解を明らかにしておくれ。


「原子力発電所は何重もの安全装置を設けていますから
 絶対に事故は起きません」

嘘八百を並べていた、
かつての原発推進者のような事は
言わないでおくれ。



「原子力 明るい未来の エネルギー」

その地は、明るくなったの?
野生動物のサンクチュアリにはなったかも知れないが。


リスクがちゃんと把握できるならば、
損保会社などによる保険も設定できるはず。

保険設定ができないとすれば、
それは許容できないリスクと言える。

戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似する事変

そういうのと同列に扱われるようじゃ、
真っ当なリスク管理などできはしまい。



地震国日本において敢えて原発が必要なわけは

リスクとも大いに関係するが、
日本は、地震国である。

地震が少ないと言われ、
データセンターやコールセンターに適している地として
宣伝さえさえれていた熊本、そして札幌でも震災があったのだ。

神戸だって、大地震が少ないと言われていたはず。
大阪北部も然り。

東北、関東、東南海の沿岸では
確実に定期的に大地震と大津波が発生してきている。


そういう地であっても
原子力発電というシステムが相応しいことを
うまいこと説明してはくれまいか。


「普通に」考えたら、
安定大陸に位置する国に比べて
大地震の多い日本は不利であるはずだが。

耐震性向上などのため、
コスト的にも不利になるのではないか。


そういう説明も、
是非して欲しいのだ。


火力発電所なら、
地震で損壊してしまっても
何なら片付けて造り直すことだって
できなくはない。

大地震でぶっ壊れてしまっても
ひとまず現代の技術で何らかの対処は可能だ。


では、原発は?


ひとたびぶっ壊れてしまうと
もう、手もつけられない。
近寄ることさえ、出来ない。
事故から7年半経っても
現地立ち入り調査に取り掛かれない。

そんなモノを、
敢えて地震国日本に造らにゃならん訳は何?


地震国には適さないだろうという考えを
覆すだけの根拠を示して欲しいのだ。



発電装置としての完成度をどう考えるのか

原子力発電所も、ひとつの「装置」「機械」「システム」である。

他のあらゆる「装置」「機械」「システム」は
夥しい失敗と事故を重ねて
完成度を高めてきている。


ものすごい数が生産され、
ありとあらゆる改良が重ねられてきた自動車や航空機でさえ
まだまだ事故が無くならない。

ハインリッヒの法則の最下層であるヒヤリ・ハットはもちろんのこと、
重大事故も頻度は減ってきたとはいえ無くなってはいない。



原子力発電所は、どうか。

「技術として完成している」などという偉い先生もおられるようだが
ホンマかいな。

全世界で、航空機を凌ぐ基数が建造されてきたのか。

それだけのトライ&エラーを繰り返してきているのか。

もはや重大事故などあり得ない
究極的な完成度に至っているのか。


原子炉格納容器だけが丈夫だからいい、というものではあるまい。

外部電源だけでもあるまい。

立地の地盤も含めて、躯体も種々の装置類も配管、ケーブル類も、
制御系も安全装置も運転・保守技術者のオペレーションも含めて、
すべての部分が完全に組み合わされて完璧に機能して初めて
全体が正常に作動するのではないか。


「想定外」の事象は、
もう全く無いのか。

福島については、「想定外だった」を言い訳に
さんざん誤魔化してきたのではなかったか。

再稼働を目指し、あるいは既に再稼働した原発については
「想定外が絶対に無い」なんて言える根拠など
どこにあるのか。



はぐらかさないで、教えて欲しい。



答えに詰まってくると
「おまえのカアチャンでべそ〜」と言って誤魔化すガキンチョのように
汚い言葉を浴びせかけるようなことは
やめて欲しいのだ。

ちゃんと、真摯に答えておくれ。


原子力発電は安いのか

特に経済関係の人々が
「安い電力」を盛んに強調する。


ホンマに、安いの?


後から後から「追加措置」が必要で
どんどん建設・改修コストが嵩んでいるのは
計算に入っているのか。


老朽原発の廃炉の手法も、高レベル放射性廃棄物の処分方法も
何も決まっていないのに、
そのコストは考えているのか。


「わからないから、計算に入れていない」のではないのか。


ちゃんと積算を示せる人は、いるのだろうか。
決まってさえいない事柄に対して。

「高レベル廃棄物も地中深くに10万年保管すれば……」
どんだけのコストなんや、それ。


ハコモノやら、構造物やら、
「経済性予測」が当たった試しがない。

国土交通省や経済産業省や環境省などの超優秀な国家公務員様たちや
外郭団体や各種コンサルタント会社などが
莫大な時間とコストと労力をかけて
「試算」を示すのであるが、
それらが正確だった試しがあるか(少しはありそうだけど)。



「造っちゃえば、こっちのもの」


そういう発想は、
もう通用しないのではないか。


「造っちゃったんだから、
 動かすしかないじゃん」

そんなんで、いいのか。



「安い」とする正確な根拠を
大々的に発表してはもらえまいか。

いや、推進するからには、
そうする義務があるのではないか。


福島でああいう事になって、
ものすごいコストを掛け続けているのだが、
それでも火発や水力発電よりも安いのか。

そういうリスクを見込んだ上での積算なのか。

わかりゃしない。


そもそも、だ。

「多少危険でも、安いからいいでしょ」

そういう問題じゃないんじゃないか?



少々人体に毒性のある添加物だけど
これを使えば劇的に原材料費が安くなるから
使っちゃえ、使っちゃえ、
そういう『経済観念』と何が違うのだろうか。


カネのことばかり考えてやしまいか?



事故が発生したら、どうするの

肝心な問題である。

もし、事故が発生したら、
どうするのか。


教えておくれ。



福島第一の時には、
様々な滑稽な(と表現するしかないくらい、悲惨な)ことが起こった。

撒き散らした放射性物質は「無主物」だから、
東電に回収の義務は無い、などという戯言も、
平気で通った。


どういう基準で居住不可とするとか、
健康被害に関する基準とか、
元々何の準備も無いものだから
すべてが後手後手に回った。


そのあたりの合意形成や法律整備は
現在は完全であると考えるのか。
エビデンスに基づいた正当な基準なり処置なりが
準備されているのか。

非常事態宣言や戒厳令で誤魔化そうっていうのは
筋違いだ。



「いやいや、福島第一のような事故はもう起こらない」

やめてくれ、そんな根拠の無い話は。
福島だって、起こらない筈だったのだ。

だから、起こる前提で準備をしておくべきではないか。

それに「完璧な安全などあり得ない」というならば
「安全厨」と罵るならば、
その時点で事故の発生を許容しているではないか。



だから、準備は不可欠なのだ。



メルトダウンしたとしても、
炉心の状況を調査し
適切に事態を収束できる手法は確立されているのか。

汚染水や汚染建材を処理する方法はあるのか。
福島では未だに苦労しているのではないか。



福島は日本の東海岸であったから、
陸上の汚染地域はまだ少なめで済んだのではないか。

玄海、伊方、若狭湾、柏崎刈羽、泊など
西海岸の原発で事故があったら、居住不能地が
かなりの広範囲になるはずだが、
それは許容するのか。

許容できるのか。

その合意は、形成されているのか。

福井県民は、県全域放棄を覚悟できているのか。
覚悟の上で、原発銀座を維持するのか。
隣県の県民も、納得できているのか。


泊から撒き散らされた放射性物質で
北海道全域の農畜産水産物は売れなくなるとしても
許容できるのか。
たかだか胆振東部の地震なのに「北海道地震」呼ばわりされて
全道で観光客の足が遠のいたのだが、
そんな程度で済む筈があるまい。



全部で50基以上も建造してきた各地において、
地域ごとにそれぞれのドラマが否応なく繰り広げられるのだ。
それらに対処する方策が
ちゃんと決められ、合意されているのか。
ワタクシは、聞いたことがないのだが。


各地域ごとに、
対応策を一覧にして常に公開しておくべきではないか。



「そんときゃ、日本全土が壊滅さ。
 あとは野となれ山となれ」

そんなこと、言わないよね?



ヤマトがイスカンダルからコスモクリーナーを持ち帰るまで
待っていれば良いとでも言うのだろうか。



アメリカやロシアのような、
オーストラリアのような、
人口に比べて広大な国土を持つ国ならいざしらず、
日本国に、『放棄地』を設けるような余裕があるのだろうか。

尖閣諸島や竹島や沖ノ鳥島や北方領土について議論するのも必要ではあろうが、
現に国民が住んでいる国土を『放棄地』と化してしまう可能性を、
許容できるのか。しても良いのか。
国民の大多数が、そういう覚悟で一致できているのか。


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疑問は次から次へと湧いてくるが、
それぞれの道の専門家が「ちゃんと」答えているのを
見聞きしたことが無い。


すぐに、話の内容が拡散してしまって、
「なんとなく安全」「やっぱり必要だよね」イメージの醸成に
努めているようにしか感じられない。


「ちゃんと」答えないから、
逆に不安を煽るのではないかとさえ思う。



原子力発電の是非について、
賛否いろいろあるのは承知している。

いわゆる「左」の人たちが反原発を標榜しているために
イデオロギー闘争の材料の一つでしかないように捉えられてしまうフシもあり、
残念でもある。


そんなことは、ワタクシにはどうでも良いのだ。


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二酸化炭素とか地球温暖化とか、
そういう議論も絡み合ってくるし
科学技術政治経済国際情勢すべてが関与する事象でもあるため
結局の所は「政治力で」決まってしまうであろうことは想像できる。

だからこそ、科学技術の一端の隅っこに少々でも関わっている「せつび」の人間の一人として

「技術的にどうなのよ?」

というところに、関心が向くのである。



一部でもおわかりになる推進派の方、
ぜひWEBサイト上でその論拠をご披露いただき
啓発に努めていただきたい。

「オレはわかっている」という偉い人たちが
一般市民を見下しつつやりたい事を推し進める時代では
なくなってきていると思うのだ。
(「原子力発電所再稼働への疑問」おわり)
posted by けろ at 08:00| Comment(0) | 電気設備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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