隣のビルの様子を見ることができる。
屋上であったり、壁であったり。
しかしたまに、
それが建設現場である僥倖に
出逢うこともあるのだ。
地中梁のコンクリートまで
打設された現場であった。
人が見当たらないところを見ると
ちょうど休憩時間であろうか。
柱部分のアンカーからして
鉄骨造とお見受けする。
小梁は、床スラブと当時に打設することに
なるのだろう。
この地下空間は、
部屋ではない。
配管などを通すための
「ピット」と称する空間だ。
これが無いと
配管を埋めてしまうことになるが
埋めちゃうと後から点検も改修も困難だ。
だから、ピットを造って
そこに配管類を通す。
少し望遠で見ると
細かい造りがよく分かる気がする。
剥がしたコンクリート用型枠が並べてあると同時に
ところどころに、
配管貫通用の孔があいているのが
わかるだろうか。
コンクリートを流し込む前に
あらかじめ紙や鉄板などの円筒を仕込んでおいて
その部分だけコンクリートが回らないようにする。
この孔に、
配管を通していく。
大きな孔は
人通孔である。
ピット内を
人間が通って回れるように
配置されている。
通過が楽なように
上部に手すり用の金物を
仕込んである。
左手の小さな三角の区画のピットでは
型枠を剥がす工程の途中だ。
ピットの各区画に到達できるように
人通孔か、床点検口が設けられる。
この部分のコンクリートを打設する前に
設備の施工図が出来ていなければならない。
配管ルートに合わせて
スリーブを仕込んでおく必要があるから。
あとから「あ、足りない」ということになっても
困るから。
あとから梁にダイヤモンドカッターで
孔を開けたりしてはいけない。
梁の鉄筋でも切ってしまおうものなら
強度がそこだけ下がり、
欠陥となってしまう。
地震時には
そこに大きな力が集中してしまって
破壊される懸念が生じる。
バブルの頃、
工期が絶対で
鉄筋屋さんに対して立場の弱い設備屋さん電気屋さんが
意地悪されてスリーブを外されて
「配管通せなくなっちゃったよぉ」と
困ったりしたという。
仕方がないから、
夜中にこっそり「コア抜き機」を持ってきて
孔を開けていたという。
そんな建物が
たくさんたくさん残されているはずである。
今の新築現場でそんなことが発覚すれば
構造計算をやり直した上で
何らかの補強をするか
下手すると壊して建て直し……なんてことに
なりかねない。
スリーブは
予備も設けておいたほうが良い。
将来的に改修する際にも
非常に役立つから。
(「鉄骨造ビルの基礎にスリーブ」おわり)