2018年07月29日

負荷計算って、自然の前には無力だな

各地で猛暑が続いている。

国内に留まらず、
北半球全体的に高温傾向であるという。

こんな時には、「冷房が効かない」というクレームが出る。



冷房負荷計算をする時には、
各地の標準的な「設計外気温度」を根拠にすることが多い。

国土交通省大臣官房官庁営繕部設備・環境課監修の
『建築設備設計基準』平成27年版(もうすぐ、30年版が出るはずだ)によれば
冷房計算上の設計用日最高気温は

東京……34.8℃
名古屋……35.6℃
京都……35.8℃
福岡……34.2℃

などとなっている。

これを根拠に冷房負荷計算を行い、
必要な冷房システムを計画する。

熱源容量も、各室放熱器の容量も、
それらにつながる配管類の太さも、
供給する電源も、
すべてこれらを元に計画していく。


だから、これを超える外気条件であると
期待通りには室内を冷やせない。

「冷房が足りない」状態となってしまうのである。



しかも。

『冷房する』ということは、
『室内の熱をどこかに運んでいって捨てる』と言い換えることができる。

空冷式のシステムであれば
屋外機などの機械を利用して
室内の熱を無理やり屋外に捨てるのである。

外が暑くなればなるほど「捨てにくく」なり
能力が低下する。

あまりにも暑すぎると
機械の能力を超えてしまって
たとえば装置内圧力が高くなりすぎてしまって
安全装置が働いて停止してしまう。

そうなると、
冷房能力はゼロになる。



ある程度「余裕をもって」能力を選定するのが良いのだが
どの程度の余裕を持つべきか
必ずしも正答があるわけではない。

大は小を兼ねるとばかりに
あんまり過大な機械をつけてしまうと
費用も高くなるし
効率も下がってしまって
それはそれでよろしくない。



かと言って、あんまりギリギリの選定をしてしまうと
想定を超える外気条件の前に
全くの無力となってしまう。



あまりにも細かい計算であるがゆえ、
「負荷計算」を神聖視する向きもあるが
そもそも負荷計算とはいたって「アバウトな」ものである。

「正確に」なんて、やりようがない。
せいぜい、どこかの誰かが決めた指針に基づいて
「決まり通りに」計算できるだけ。

現実がその通りになる保証はない。



昨今のような事態になってしまうと
負荷計算の無力さを痛感する。

決して無駄な作業だなんていうことはないのだけれど
信頼性の高いものでもない。



かくして、
設備計画においては
いつも悩ましいのである。



公共建築だと
「決まりどおりに計算した結果ですから」
と言い訳ができるし
計算結果を超える能力のものを選ぼうものなら
「税金の無駄遣い」呼ばわりされかねないから
「設計基準」に則って計画する以外の選択肢を持ちにくい。

しかし民間建築においては
そうも言っていられない。

暑い寒いのクレームは
結構致命的だったりするのだから。



まだまだ続く夏。

さて、次の物件の設備計画では
どうしようか?
どう考えようか?
(「負荷計算って、自然の前には無力だな」おわり)
posted by けろ at 08:00| Comment(0) | 空調設備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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