ホントに、タダの鋼板を貼り付けるだけ……では
弱い雨はしのげるかも知れないけれど
激しい雨になったらどこからか雨漏りしてしまうし、
強い風が吹いたら煽られて剥がれるかもしれないし、
日射に晒されて高熱になったり
冷気に当てられて冷たくなって表面が結露したりする。
雪の重みでひん曲がるようでも困る。
とにかく、「屋根」としての機能を追求していくと
必要な措置がどんどん増えていく。
そんなこんなのサンプルを
見せていただく機会があった。
コンクリート屋根スラブに比べたら、
ペラッペラの板でしかない、鋼板。
強度をもたせるために、折板にする。
その上に断熱材を貼り付けるなら、
平らにしなくてはならない。
断熱材が吹き飛ばないようにしっかり留めなくちゃならないけれど、
留めるための金物が貫通する部分は断熱性の欠陥ともなる。
強い樹脂などを駆使して、熱橋(ヒートブリッジ)を緩和する。
そして断熱材の上に、防水層を設ける。
ダメになってしまった古い防水層の上に
新たに断熱層と防水層を設ける工法のサンプル。
正直なところ詳細はよくわからないけれども、
いろいろな工法のサンプルが並んでいると、
何かしら知見を得たような錯覚に陥る。
百聞はなんちゃらで、
実物を見るということは重要ではあるのだが、
網膜に映っているものであっても
知覚を持って認識されなければ
見ていないのと一緒だったりする。
見ているのに「観えていない」ことになる。
機能を追求すれば、複雑になり、
コストと施工性を指向すれば、簡素になる。
小さな領域ではなくて、
数百、数千uにわたって施工するとなると
その差は大きなものとなる。
働き方改革だ、
時短だ、
週休二日だ、と
業界でもいろいろと掛け声が喧しいが、
つくづく『建築』とは労働集約型産業であると思い知らされる。
部材の統一や省力化工法などが進められ続けて、
年々少しづつ進歩発展してはいるのだけれど、
建築物は基本的に単品生産品だから、
「労働集約」に頼らざるを得ない部分もある。
実際に建てる前段となる「設計」という業務も同様なのだけれど。
インターネットが普及したような、
アイフォンが登場したような、
劇的な変化というのは起きにくい業界なのかもしれない。
とか書きながら、待てよ。
いま書いている文章だって、
昔はあり得なかった手段で記述しているのじゃないか。
筆やペンではなくて、
キーボードやフリックが当たり前になってる。
記事データもダイヤルアップでピーヒョロロと送るんじゃなくて
高速(何を基準にするのか知らないが)回線であっという間だ。
もはや、手描きの図面など描くことは無くなった。
意匠図の「裏トレース」なんて、
一体いつの話?
鉛筆と消しゴムと電卓で積算……なんて、あり得ない。
おお。
やっぱり世の中、
劇的に進歩しておるではないか。
「せつび」だって、
よぉく考えたら、
かな〜り変化しているぞ。
そうなのだ。
すごく、変わってきているのだ。
振り返ってみると、
やっぱり劇的に変化してきているのだ。
そして、これからも。
結構楽しみだったりする。
(「鋼製屋根の防水」おわり)