テレビ塔が建っている。
「テレビ塔」と呼ぶのに、テレビの電波は送信しない。
FM3波の中継施設として利用されている。
じゃあテレビ塔じゃないじゃん、ということであるが
NHKの予備送信所として、
また地上デジタル放送の転送所としての機能はあるから
まったくの誤りとも言えない。
ともあれ、「テレビ塔」と呼び習わされて久しいがゆえ
それで通しているらしい。
だいたい、200万都市の都心部にたかだか150mに満たない電波塔が
機能を果たせるわけがない。
今は、札幌市西方の手稲山頂にアンテナが林立しているのである。
さて、この「テレビ塔」。
日本初の電光時計が設置された塔でもある。
それを寄贈した松下電器産業のブランド名である
「ナショナル」が記載されていたが、
後に英語表記「National」になり、
現在はブランド名変更に伴い「Panasonic」になっている。
とても目立つので、
外国人観光客から「Panasonic tower」と呼ばれているとも聞く。
各地に高層建築物が建っている現代にあっては
大して高い塔でもない。
電波塔としても、もはや使命を終えた感がある。
けれど、大通公園を一望し、
さらに向こう側には大倉山ジャンプ台を臨む景観が
存在価値を高めている。
ランドマーク、モニュメントとして、
都市の象徴のような扱いになっている。
非公式ゆるキャラの「テレビ父さん」が
出没している。
なぜ非公式扱いなのか……。
かわいそうな「父さん」。
展望台の入場には、大人で720円の料金がかかる。
じつは、
札幌市役所の最上階から
ちょっとアングルが違うけれども
似たような景色を見ることができる。
夏期と雪まつり期間の開庁日であれば、
屋上に出ることも可能だ。
こっちにも説明がある。
無料であることが、
おすすめポイントである。
今は「るるぶ」など旅行解説のほか、
ネット上に玉石混淆の情報が満載だ。
旅をするには、便利な時代になったものである。
けれども、実際に現地に行ってみなければ
気づけないことがあったりして、
それが旅の面白さだったりする。
(「パナソニック・タワーのある街」おわり)