闘牛場がある。
しかし、スペインのそれとは違って
牛の闘いと称した、文字通り命懸けの殺戮を見ながら興じる娯楽とは
異なる様態のものである。
角を突き合わせて激しくせめぎ合わせるも、
牛が傷つかないように引き分けにするのだとか。
闘牛場は、
その開催日以外にはひたすら静寂の下にある。
がらんとして、
ただ蕭蕭と小雨がくだるのみ。
南総里見八犬伝にも記されているという
伝統行事なのだ。
『牛の角突き』
として、
重要無形民俗文化財に指定されている。
開催日以外は、
しんと静まっている。
そんなところを訪ねるのもまた
乙なものである。
(「山古志闘牛場」おわり)