2018年01月19日

木造建築の『せつび』

木造建築物が、大型化してきている。

というよりも、中型・大型の建築物にも
木構造が採用されるようになってきている。

「設計事務所をやっています」と言うと、
業界外の方々からは「住宅、とか?」と訊かれる。

「いえ住宅は、やっていないので」と答える。


設備技術者が、住宅の設計に関わることは
少ないのではないか。

いや、マンションなどの大型の集合住宅なら
関わることもあろう。
しかし、一般の戸建住宅に関わることは
まず、無いんじゃないだろうか。

単に、ワタクシが知らないだけかもしれないのだが。



そもそも、住宅に「設備設計」を入れてしまうと
設計事務所は成り立つまい。

「いや、私は設備も含めて住宅の設計をしております」と仰る方も
いらっしゃる。

ちゃんと配管とかダクトとか配線とか描いておられる方も居る。

それはそれで、素晴らしい。
(と言うか、本来当然のことなのである。建築士法の趣旨から言えば)


しかし、
「私は常に設備設計も自分でやっている」という方の中には
実は「設備設計」とは名ばかりで、
衛生器具のプロット、
照明器具と配線器具のプロット、
分電盤位置のプロット、
それらを総称して「設備設計」だと認識している方も
実際にいた。

その「設備設計の実務経験」を引っさげて、
設備設計一級建築士の講習受講資格を得ておられた方もいた。

……申し訳ない、これらに言及し始めると
少々熱くなってしまうところがある。

今回は、そんな事は主題ではない。



閑話休題。



そういうわけで、
設備に関わる仕事を続けてきたワタクシではあるが、
「木造建築」の「せつび」については、
そんなに関わった事例が多くなかった。



さて、木造建築。


構造が、RC造やS造とは大きく異る。

よって、それに取り付く「せつび」の在り方も
いろいろと異なってくるのだ。



とある、施工中の現場。


mkzuknckbtnstbhmnrnktt1.JPG


左側に電線管が見えると同時に、
中央左に何か金物が見えるであろうか?


機器やダクトなどを吊るために、
RCやSならば、スラブ打設前に「インサート金物」を設けるのであるが、
木構造の場合にはそうできない。


木ビスで留めても良いのであろうが、
この現場では堅牢性確実性などを考慮して
このような施工を選択したようである。


金物の上部は、こんな感じだ。

mkzuknckbtnstbhmnrnktt2.JPG

「墨出し」的な印は、
鉛筆で十分。


コンセント類のボックスと
それに至る電線管は
こんな感じで取り付く。

mkzuknckbtnstbhmnrnktt3.JPG


上から持ってくる場合にはこうなるが、
下から持ってこようとすると難しい。

腰壁コンクリートの上はそのまま木の土台があるため
壁仕上との間に空間がなければ
下から通すことができない。



スパンが飛んでいるから、
集成材の梁のせいは高い。


配管やダクトの梁貫通も出来ない。


mkzuknckbtnstbhmnrnktt4.JPG


場所によって梁の高さが異なるし、
そこかしこに木の材料が出てくる。
金物で補強している部分も、
斜材が出てくる部分も、
たくさんある。

mkzuknckbtnstbhmnrnktt5.JPG


がらんとした天井内に、
梁と吊金物だけしかないRCの天井裏とは
かなり様子が異なっている。

mkzuknckbtnstbhmnrnktt6.JPG

ホールダウン金物で、
梁同士を接合している。

火打ち水平構面も105mm角の太い(と感じる)木材である。


このテの金物類は、
建築士試験対策で一所懸命に覚えるのであるが、
イラストと名称だけを一対一対応で覚えようったって
なかなか記憶に刻まれるものではない。


何しろ実物を見るに限る。
何が、どういう目的で、どのように使われているのかを
考えながら見るに限る。
解説を加える人物が同行して下されば、
より理解が深まろう。

mkzuknckbtnstbhmnrnktt7.JPG


基礎と土台との接合部にある
ホールダウン金物。

mkzuknckbtnstbhmnrnktt8.JPG

梁同士のやつとは、
種類が異なる。


床に敷くべく
山積みされている断熱材。

mkzuknckbtnstbhmnrnktt9.JPG


こんな感じで、敷きまくる。

mkzuknckbtnstbhmnrnktt10.JPG


いちいち、根太の間に埋めていかなくてはならない。

とても手間がかかるのだ。



木造建築は、
RCやSよりも
細かい手間が多くかかるように感じられた。


公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律
なんてものができたから、
国交省でも推進の方向性が定まったようである。


だから、設備技術者にも関わりが増えてくるに違いない。

これからは、木造建築について
いろいろと知識を蓄えていく必要があるようだ。

いや、既に多くの設備技術者が、
木造案件に関わっておられるに違いない。
ワタクシも何とかかんとか付いていかなくちゃならないと
思っているだけの話である。

既に、周回遅れであるような気もするのだ。
(「木造建築の『せつび』」おわり)
posted by けろ at 09:00| Comment(0) | 設備一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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