正面側から見えないように、
石積みっぽい壁で目隠しされているけれども、
上に積もったら嫌だから
タンクの上に防雪屋根が取り付けてある。
タンクの上に、
ごっぽりと雪が積もってしまって、
一部融けて、また凍って、
それを繰り返していくと
給油口が氷結して困ってしまうから。
通気口も埋もれてしまいかねないから。
レベルゲージも見えなくなるし。
人目につきにくい所にあるから、
こっそり灯油を盗まれても困る。
ということで、
給油口は鍵付きになっているし、
送油管には防護カバーをかけてある。
もちろん、
その道のプロが、
本気で持っていこうと思ったら、
こんな程度では全く防げないのであろうが
全くの無防備よりはマシに違いないのだ。
「ほんの出来心で……」
という犯行は、
少なくとも防げるはず。
日本の防犯対策は、
基本的にこんなコンセプトのものが多い。
ある意味、気休め。
逆に言えば、
その程度で十分に抑止力になる。
治安の良さと言えるだろう。
玄関や窓の鍵も
オートロックも
自販機の盗難防止装置も
イモビライザーも
本気で犯行に及ぼうとする輩がいたら
ほとんど役に立たないのだという。
防犯カメラだってそうだ。
「記録してるぞ」という抑止力が、
せいぜい「防犯」となるだけで
犯罪行為そのものを阻止する機能はない。
「防犯」と名付けられていても、
犯行が行われた後、
犯人の目星をつけるための
「証拠保全」機能があるだけである。
灯油タンクに、
何の措置もない所も多い。
庭の散水栓だって、
いちいち鍵付きにしていない所も多かろう。
玄関に鍵をかける習慣がない地方もあろう。
「せつび」の様態を見ることで、
その国(あるいは地域)の治安状況も
知ることが出来たりする。
そんな観点から観察するのも
面白かろう。
(「雪と盗難とに配慮した灯油タンク」おわり)