蒸気を送り、還水を戻す。
そういうものである。
省エネもへったくりもない時分には、
ガンガン蒸気を作って送って、
冷めて湯になった分はそのまま捨ててしまえ、
そういう事もあったようだ。
でもそれは、水と熱エネルギーとの無駄である。
熱媒としての水は、潜熱により熱エネルギーを運搬する手段として有用で、
何度でも使い回しができるから、捨ててしまうのは勿体無い。
冷めたといっても湯だから、
毎回水から蒸気を作るよりも
回収した還水(湯)を再加熱して気化させたほうが
エネルギー的にもずっと有利だ。
よって、蒸気暖房に利用した後にできた還水は
機械室まで戻してやる。
ボイラ室の床に、
こんな縞鋼板の蓋が並んでいる。
これを開けた下に、
機器が入っているのである。
「真空暖房ポンプ」と書いてある。
「真空給水ポンプ」という呼び方もある。
還水配管内の圧力を下げて、
還水を真空引きして、
このポンプ内に集める。
集めた還水を、還水槽に送る。
(直接ボイラに戻すシステムもある)
そういう機械である。
還水は重力によって下方に流れるから、
地下ピット内のような低い位置で引っ張ってやる。
リフト継手などを使えば、
ある程度低い位置から高い位置に引き上げることも出来るのだが
ここでは詳しくは触れない。
ここが水没したら困るから、
ちゃんと釜場を作って、排水ポンプも据えてある。
ちょくちょく人間が入って行かなくちゃならないから、
降りるためのハシゴも設けてある。
還水槽に戻す配管。(左側が、還水槽)
槽下部にポンプがあって、
槽上部まで送っている。
同じ水分をぐるぐる使いまわしするのであるが、
化学的な性能を安定させるため
薬液を注入したりする。
温水暖房だと、
熱い湯を送り、ぬるくなった湯を戻す。
温めて再送する。
ずっと液体のまま、
顕熱を送るだけなので、
話が簡単だ。
でも蒸気暖房だと、
潜熱を利用した熱搬送であるため、
複雑になる。
代替フロン熱媒も蒸気同様に潜熱利用なのであるが、
そのシステム部分は機器本体に内蔵され
「建築設備」のシステムからは離れてしまっている。
本来、設備とは「システム」なのであるが、
科学技術の発達発展とともにパッケージ化が進み、
「システム」から「パーツ」へと
変わりつつある。
「エンジニア」は「チェンジニア」に
変貌しつつある。
それを「成り下がり」と受け取るか、
「進歩」と捉えるか、
価値観の分かれる所かも知れない。
(「還水を集めて戻す」おわり)
大変参考になりました。
蒸気暖房、ホントに減りました。
設計基準にも載らなくなったし、古い設計資料集を引っ張り出さないと
いちいちモノゴトがわからなくなってきています。
時代の変遷ですね。