ひたすら解体中の建物。
躯体を残して、
ぜ〜んぶ解体して、
内外装を、まるっとやり替える。
だからといって、
滅多矢鱈に壊しまくるわけにはいかない。
壁とか床とか天井とか、
内装や下地を壊す前に、
設備モノは取り外しておくのだ。
たとえば、便所。
まず、
衛生器具(ここでは床置ストール小便器)、
温水パネルヒーターを
取り外す。
たとえば、洗面所。
大きなステンレス流しと
温水パネルヒーター、
照明器具、
吸込口を取り外す。
古い建物だから、
配管がライニングに埋め込まれている。
一応、
配管には防食テープが巻いてあるみたい。
別の室の流し台。
ここでは、
コンクリートブロックでライニングが形成されている。
積まれたブロックを、
配管を埋め込むために、斫(はつ)って、
配管した後に
モルタルで埋めている。
こっちの配管は、
ジュート巻きみたい。
さっきの洗面所とは、
造られた年代が違うのかも知れない。
天井カセット形の機器は、
まず天井パネルを取り外す。
照明器具も、しかり。
電線の切れ端は本来、
ビニルテープで巻いておいたりするものだが、
「全面解体」のため、
既に施設全体の電源は完全に死んでいる。
だから、ここでは差し支えない。
(電源が生きている建物の場合には、
厳に気をつけていただきたいものだが)
スイッチ類も、
まずは表面に出ているプレートを取り外す。
接続している電源ケーブルは、
パツンパツンと切ってしまう。
廊下についている、
分電盤も取り外す。
太いの、細いの、
電源に信号にアースに、
いろんな電線・ケーブルが
つながっていたことがわかる。
「造り上げていく」現場は、
モノがどのように出来上がっていくのかがわかって
興味深い。
「設計」とは、
「餅の絵を描く」行為だ。
実際に餅を作ってくれるのは
各工種の職人さんたちだ。
出来たものを味わってみると、
描いただけではわからない事柄も
いろいろわかるのだ。
逆に、
「壊していく」現場もまた
興味深い。
ひと時代、ふた時代前の建物が
どのように造られていたのか、
現代と比べて良い面、悪い面を含めて
観察することができる。
『観る』ことによって得られる知見は必ずあるはずだ。
眼球には映っているけれども
脳において認識され得なかったことも
多々あるには違いない。
それでも、『観る』ことは大事だと考えている。
積算や分別の都合もあるから、
「解体」にも設計行為がある。
実際の解体現場を観ると、
解体設計という『餅』の描き方も
わかろうというものだ。
なんて、
もっともらしく文字を連ねることもできるのであるが、
何の事はない、
「観ていて面白い」
それに尽きる。
好きなんだな、
現場を眺めているのが。
なるべく、職人さんの邪魔にならないように
隅っこから、
陰から、
こっそりと観るようにするので
あんまり邪険にしないでいただきたいのだ。
(「壊すにも手順ってものが」おわり)