たまに、建築とは関係の無い方から
訊かれることがあります。
そんな時、
ちょっとした躊躇いが生じます。
躊躇うんだけれども、
結局のところ
「設計事務所をしております」
と答えます。
「ああ、なるほど」
大抵の人は、それで納得します。
そして、大抵の人に、勘違いさせてしまう結果になります。
「ああ、あのビフォーアフターみたいな……」
だったり、
「そうですか、匠なんですね」
とか。
どういう風に話を持っていくのが適切なのか、
いつだって迷います。
迷うんですが、結局のところバリエーションがあるわけじゃなくて。
「建物そのものの設計ではなくて、
冷暖房とか、給排水とか、
そういう建物の中身の仕事をしております」
大抵の場合、
「???」
相手の表情に疑問符が散りばめられるのです。
ごくたまには
「ああ、設備なんですね」
そういう人も過去におられましたが、
記憶にある限り、2人くらいでしょうか。
特に詳しく聞きたい人などいないので、
それでお話はお終い。
先方には、
謎だけが残ります。
というか、別に気にしちゃいない、
というのが実際のところ。
だからと言って、
「設備設計をしております」
と冒頭に言えば良いかというと、
なかなかそうでもなく。
「設備」という単語と「設計」という単語とが
結びつくことに物凄い違和感を感じられるようで、
訊き返されることしばしば。
よって、結局
「設計事務所を〜(略)」
と言うしかなく。
もちろん、嘘じゃあない。
建築士免許は持ったし、
ちゃんと知事に事務所登録をしているんだから、
法律的に全く文句のつけようのない「設計事務所」に違いありません。
ただ、世間一般の「設計」と「設備」とが
「設備設計」という具合に結びつかないだけなんです。
なんか、
面白いですよね。
昼間の空にだって、星は存在しているんですが、
「昼間」と「星」とが結びつかないような?
まあでも、
「設備設計技術者の知名度向上を!」
とか、
「設備設計分野をメジャーに!」
とか、そんな思いは現在ありません。
「???」
という反応に対しては、
「まあ、そんなもんだよな〜」
と思うのみなのです。
だって、
一人でやってるだけの、
零細企業だもん。
業界を背負って立つような
規模でも立場でも実力でもないし。
資格も経験も能力も桁違いの錚々たる技術者を
何十人も、いえ、数百人抱えているような
大手総合設計事務所、大手設備設計事務所で取り組まなきゃ
業界としては話にならんでしょう。
数十年間に亘って取り組んでおられるはずの、
設備設計事務所協会とか、
建築設備技術者協会とか、
そういう団体に継続して頑張っていただくしかありません。
実のところ、
過去記事を漁っていただければおわかりの通り、
少々吠えていた時期もございました。
個人でも、何らしらできるんじゃないか、と
考えていた時期もありました。
けれど、
そんな所にエネルギーを投入しても、
致し方ないなと諦めてしまった面もあります。
だいたい、そんな事を頑張ったって
面白くない。
楽しくない。
もちろん、収益にもつながらない。
それよりは、
もっとこの仕事に楽しく取り組んでいたい。
面白さを感じていたい。
理屈無く、
楽しい『せつび』を愛でていれば良いんじゃないか。
そんな気がしてきたのです。
このブログも、その一環なのです。
さて、
やっぱり毎回躊躇いが生じます。
果たして、
「設計事務所をしております」
というのが適切なのか、
「設備設計をしております」
と言っておくのが良いのか。
まあ、どっちだって構やしないんでしょう。
気にせず、テキトーにどっちか言っておけば良いでしょう。
もしも内容が気になる方がいらっしゃるようでしたら、
丁寧にご説明差し上げた上で、
めくるめく『せつびワンダーランド』へ、ご招待することと致しましょう。
(「ワタクシ、設備設計をしております」おわり)
一般の方々の認識から切り離されている職業は
たくさんありますよね。
でも、いいんです。
脇役で、黒子で構いません。
図面や現場の『センス』は
きっと見る人が見れば感じ取れる。
決して「一人悦に入っている」だけじゃないはず。
そういう「先人の偉業」を感じ取れるようになりたいな、と
願っています。