一定規模の床面積を有する建物には
屋内消火栓を設置する義務があります。
消火水槽に溜めてある水を
消火ポンプで各消火栓に送るようになっています。
屋内消火栓は、初期消火を目的としているので、
火元付近の2箇所の消火栓から同時放水できるだけの
水量を送ることができるように設計されます。
(昔、5箇所同時放水という規定だった時代があります)
さて、ある施設の消火栓。
黒い内装に合わせて、
黒く塗った扉付き。
消火栓の色や形状は、
所轄消防でOKが出れば問題ありません。
「消火栓」の自体や色、大きさも、
要相談。
この扉には「乾式」と書いてあります。
本来、消火栓は
消火ポンプが起動するとすぐ放水できるように
消火管内を常に充水しておくべきものです。
しかし寒冷地の場合、
鉄の配管の中に、ずっと水が入りっぱなしで動かない場合に、
管内の水が凍ってしまって配管が破裂したり、
そもそも凍っていたらイザという時に肝心の水が出ません。
それで、通常時には管内は空っぽのままにしておいて、
消火ポンプが起動してから
管内をゴボゴボと水が送られてきて、
少し経ってから放水が始まる……ということも
許容されます(所轄消防による)。
こういう方式を「乾式」と言います。
(対して、本来の方式を「湿式」と呼びます)
乾式にする場合、
ポンプが起動してから何分以内に放水できるものとする
……などの基準があることが多いので、
確認が必要です。
平面的に広い建物だと、
消火水槽やポンプの位置、
配管ルート、太さについて
ある程度配慮しないと
基準内の時間で放水できない可能性があります。
場合によっては、
ポンプを標準よりも強力なものにする必要が出るかも知れません。
乾式が当たり前の地域では、
敢えて「乾式」と表示されていないこともあります。
寒冷地の建物を設計する場合、
ちょっと気にしておいたら良いかと思います。
いざ、消防の完成検査で、
「○分以内の放水」が達成できなかったりすると
一大事。
ちゃんと計算して確かめておきましょう。
(「乾式の消火栓が」おわり)
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