それでも、ある程度は残存しているものだ。
雪国で、
それらを見ると、
『北国の知恵』的なものに
目が留まることであろう。
金物や、木材を使った、
雪止め。
屋根に積もった雪が、一気に下に落ちて
下にある庇や物置などを潰してしまうことがないように、
通行人を押しつぶしてしまわないように、
運の悪い車両を走行不能にしてしまわないように、
雪止めを取り付ける。
敷地が広くて、
屋根の雪がいくら落ちても
何の害もないような条件だと、
こんなモノは要らないのだ。
でも、住宅地においては、
なかなかそうはいかないものだ。
古い建物だから、
ひと冬雪を乗せたままで持ちこたえられるほど
強度があるわけではなかろう。
だから、積雪の度合いに応じて
屋根の雪下ろしも必要だ。
雪止めは、その際の足場代わりにもなる。
これが無いと、
トタンのハゼ以外の部分は
もの凄く良く滑る。
長靴のゴムをハゼにかませて、
なおかつ、雪止めにも足をかけつつ、
雪を下ろすのだ。
ロープ等で、反対側から「命綱」を張っておくのも
やっておかねば危険である。
煙突の斜面上側には、
雪割りも取り付けられている。
灯油タンクは、屋根で覆われている。
(この屋根は、後付けのようにも見える)
雪ですぐ壊れるから、
雨樋はついていない。
だから、軒下は砂利敷にして
雨水を受けるようになっている住宅も
少なくない。
新しい住宅になると、
かなり様相が異なる。
雪処理の手間を省くため、
勾配屋根にしないことも多い。
ひと冬雪を乗せたままでも問題ない強度を確保したり、
屋根上に融雪装置を設けたりすれば済む。
だいたい、屋根の雪下ろしをしても、
その雪をどうするかが、また課題なのである。
敷地に庭に余裕があれば春まで積んでおけばよいが、
そうでなければ、トラックにでも積んで
雪捨場(という場所が、冬になると開設されるのである)へ
運んでいかなくてはならない。
とまれ、
雪国に行ったら、
屋根を見てみて欲しい。
その地の降雪量や、気温に応じた、
それぞれの工夫が施されているのに気づくであろう。
いや、雪国に限らないのだ。
それぞれの土地で、
それぞれの気候風土や、歴史的経緯に対応した『何か』が
見られるものである。
だから、旅は面白いのである。
(「雪国の屋根についているもの」おわり)
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