2016年09月12日

設備技術者も一級建築士を取ったほうが良い

先週、一級建築士学科試験の合格発表がありました。
合格者属性を見るに、相変わらず設備系の人数が
とても少ないんです。

設備技術者は、もっと一級建築士を取るべきだと思うんです。


合格者の属性は、JAEICの発表によると、

学歴・資格別では、建築設備士0.9%

職務内容別では、その他(行政、設備設計、積算、研究教育等)22.9%

ということでした。



1.合格者属性から見る、設備技術者の割合


建築設備士の属性の人だけが設備技術者というわけではなく、
二級建築士の属性で受験している設備技術者もいるし(ワタクシも、この部類)、
大卒の学歴で受験している設備技術者もいるはず。

大手ゼネコンや大手設計事務所には、
建築学科卒で設備関連部署に配属されている人もたくさんいるし、
内部異動によって、意匠・構造・設備の分野を動く人もいますから、
設備技術者の割合は、建築設備士0.9%よりは多いはずです。


職務内容別で「その他」に含まれている設備設計者のほか、
工事監理や現場管理の中にも少し含まれているものと思われます。

でも、5%を超えることはなさそうですね。
構造設計でさえ8.6%ですから。


その、数少ない設備技術者は更に、

・機械設備技術者
・電気設備技術者

という、まったく異なる2分野に分かれているわけで、
それぞれの率を出すとなれば、
とてもとても小さな数字になってしまいそうです。


職務内容別の属性表示は、ぜひとも細分化していただきたいものです。

・設備現場管理
・設備工事監理
・機械設備設計
・電気設備設計

そうしないと、『設備』に関する建築士制度の穴が見えてきません。



2.『設備分野限定』の設計資格は必要だ


ある、設備設計事務所の経営者の方が、
「建築設備士資格で設備設計ができるような方向に持っていきたい」
「設備設計事務所登録ができるようにしたい」
と仰っていました。

『設備』は、意匠や構造とはかなり異なる専門分野である。
とは言え、意匠設計や構造設計の上に成り立つ従属的な側面も大きい。
従って、現行で唯一の設計者資格である「建築士」の権限限定版として、
設備分野に限定された設計資格者として「建築設備士」を位置づけたい。

そういう趣旨でした。



現行法規では、設備分野も含めて、
すべて建築物に関わる『設計』は、建築士だけが行うことができると
されています。

よって、設備設計図にも、それに関する法的な設計者である建築士の氏名が
記載されます。

でも実際のところは、設備に関する計画も、計算も、作図も、
設備技術者が実施していて、
法的な設計者である建築士は「記名押印」しているだけであることが多いのです。
中身がわかった上で、指導監督的立場での記名押印ではなく、
中身は良くわからないけれど、法的立場として記名押印しているだけ、
という例も、少なからずあるのです。


それであるならば、実質的に設計的な行為を行っている
設備技術者の責任を明確化するためにも、
設備分野に限定した設計資格を設けたほうが良いのではないか。
現状「アドバイスしてもよい」だけの位置づけである建築設備士を、
限定設計資格として位置づけるべきではないか。

現行で法的な設計者となっている建築士にしても、
自分の専門外の分野の図面に対して、
法的責任を持たされるのは困るのではないだろうか。

ワタクシ自身も、ずっとこのように考えてきましたので、
過去の記事(カテゴリ:建築士制度)に、
いろいろ書き連ねてきています。

今改めて見ると拙い記事ばかりですが(まあ、今でもちっとも改善していませんが)、
その時々の思考の記録として、そのまま残してあります。


自動車の運転免許は、扱う車種によって区分されています。
社会情勢、交通情勢、インフラ整備、物流の変化に応じて漸次改正していて、
「中型」なんかも出来ています。

医療関係の資格も、「医師」だけではなくて、
分野に応じて、社会情勢や技術の進歩に応じて、
様々な資格が追加されてきています。
まだまだ十分ではない面が多いようですが、
「医師の指示なく実施できる医療行為」について
権限を限定した医療資格が、「医師」以外に
たくさん作られています。

建築物全体の設計資格としての「建築士」の他に、
設備分野限定の設計資格を設けるべきだ。

ワタクシも、先の設備設計事務所経営者と同じ意見を持つのです。



3.設備設計一級建築士の位置づけは変だ


建築士制度に関する国や設計業界は、
上記の思惑とは全く違う方向に動いています。

いわゆる姉歯事件をきっかけに進められた
建築士制度『改革』によって、
従来の『建築士』の上位資格として、
・構造設計一級建築士
・設備設計一級建築士
というものが創設されました。

「上位」資格、というと、語弊があるかも知れません。

しかし、

「一級建築士として5年以上構造(or設備)設計の業務に従事した後、
 国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習の課程を修了すること」

によって構造(or設備)設計一級建築士証を申請できるわけですから、
制度として「建築士の上位」に位置づけられてしまっているのです。

意匠設計の方々は、もっと怒るべきではないでしょうか。
建築物全体の設計統括者である意匠設計者のほうが「上位」のはずだ、と。
(実質、そうなんだし)


現行の設備設計一級建築士は、『建築士のうち設備に詳しい者』という立場です。

建築士資格者の中に設備技術者が決して多くないことを鑑みると、
そもそも設備技術者に対して門戸の狭い資格であると言えます。


看護する仕事をしようと思ったら、
まず医療資格の統括である「医師」免許を取って、
更にその上位資格である「看護医師」(架空の資格です)の免許を
取らなくちゃならない。
看護医師とは、医師の中で特に看護に関する専門性の高い者である。
……そう言うようなものなのです。

医師を最上位に形成される医療関係資格群の中で、
看護分野に限定した医療関係資格である「看護師」があるのであって、
最低限の医療資格である「医師」の上位に、
看護に詳しい「看護医師」があるのではありません。


同様に捉えるならば、
建築士を最上位に形成される設計関係資格群の中で、
「建築士」の下に、さまざまな限定された権限を有する
専門資格群があって然るべきではないでしょうか。

「設計に関する最低限の資格である建築士」という位置づけに
なってしまっている現状は、おかしいのではないでしょうか。


もう10年も前になります、喩え話を書いてみました。

餡(あん)職人の憂鬱(1)〜(3)


10年も経ちましたが、あんまり状況は変わっていないように感じます。
ただ、あまり「厳格な法適用」は実施されていないようで、
関連技術者が次々と投獄されるような事態には(今のところ)なっていません。

ただ、バブル期には当たり前のように行われていた
「構造梁を後からコア抜きする」ような事態が、
問題視されるようになってきているのは
ものすごく前進した事項だと思います。

(役所の標準設計に「梁コア抜き」っていうのがあったんですから!)



4.設備技術者も一級建築士を取ったほうが良い


じゃあ、どうする? という話。

「建築設備士」を、設備分野限定の設計資格として位置づけるべく、
社会的、政治的に一所懸命に働きかける?

設備技術者の社会的地位向上のために、
一般社会にアピールする?

設備設計事務所協会に、建築士事務所協会のような
法的位置づけをもたせるよう、議連に働きかける?


ワタクシの周囲では、設備技術者の人材難が叫ばれて
久しくなっています。
(他の地域のことは存じ上げませんが)


先の経営者曰く、

「設計者として法的に位置づけられることで、
 設備設計を目指す若者が業界に入ってきやすく
 なるはず」

「現在の若手技術者の励みになるためにも、
 早急な制度改正が必要だ」

言わんとすることは、よく分かるつもりです。
意見としては、ワタクシとて、ほぼ同じです。

方法論として、
「〜〜〜〜を働きかける」
というのは、長期的には必要な事項だと思います。
実際、設備設計一級建築士制度が議論されている頃にも、
制度が出来てからも、
各方面でさまざまな働きかけが続いていることと思います。

けれども、いかんせん、発言力が弱い。立場が弱い。

10年近く経っても、ぜんぜん進んでいない感があります。


それに、求めていることは、現行の設備設計一級建築士制度が
出来た経緯とは逆の向きなのですから、
そう簡単に変えられるものとも思われません。

だから、短期的には、もっと別の手段を取ったほうが
良いのではないかと思うのです。


それは、

設備技術者も、一級建築士を取る

です。


いえ、簡単なことだとは思っていませんよ。
相当高いハードルですよ。

建築系学科のルーツを持たない者にとって、
この試験が、如何に困難で、
理不尽な(と感じる)ものであるか、
身を持って体感してきたつもりですから。

それでも、敢えて提案したいと思います。


もちろん、全員がそうすべき、とは申しません。
「志のある方は」という檄文になりましょうか。

でも、今現在よりも、もっと多くの設備技術者が、
設備設計一級建築士を持たないと、
(つまり、その前段として、一級建築士を取らないと)
外野でワーワー言っているだけだとしか
受け取られない。

当事者なのにも関わらず、蚊帳の外になってしまう。
(設備設計一級建築士創設時の議論に、業界団体が
 加われなかったことが物語っています)



建築設備士だって難しいのに、
建築士なんて、無理無理。

今だってヒマじゃないのに、
時間をかけて、
専門外の分野を勉強してる場合じゃない。

時間もカネもかかるし、
収入が増えるわけでもないし、
やってられない。

どうせ下請け仕事だから、
あんまり関係ない。


……否定的要素は、たくさんあることでしょう。


でも、設備業界が前進を目指すなら、
現行制度の上に乗っかって、
議論の席に座する当事者としての立場を得る。

設備設計「補助」という、建築士法上の「グレーゾーン」から、
日の当たる立場に、しっかりと乗っかる。

乗ったうえで、設備技術者の立場を主張する。

それを提案したいと思います。



普段、設備設計をやっていて、建築士資格を持っていない
技術者の皆さま。
一級建築士資格取得に、チャレンジしてみて下さい。
(当然、その後には設備設計一級建築士も)

設備設計事務所を経営していて、
事務所登録のための管理建築士を置くだけで、
建築士資格を持つ設備技術者が居ないという方。
社員の方々に、取得を勧めてみて下さい。
相応のバックアップをしてあげて下さい。
ぜひ、ご自身もチャレンジしてみて下さい。



ワタクシ自身は、
そういう思いもあって、
ずいぶん時間は要しましたけど、
(頭悪いだけ、と言われたら、その通りですと認めるしかありませんが)
一級建築士を取りました。

その経緯や逡巡は、
過去記事(カテゴリ:建築士試験)に
書いてきました。

その後も、個人として出来ること(大したことはできませんが)には
取り組んできているつもりです。



本気で「将来の設備設計業界が云々」を思われるのでしたら、
長期的な「制度改正」も視野に入れつつも、
今現在できること、
現行法の制約の下で、最大限力を発揮できる可能性のあることに
取り組んでみていただければと思います。


四の五の言わず、
一級建築士を取ってやりましょうよ。


「住宅の設計(設備を含む)を5年以上やってました」ってだけの経歴で
設備設計一級建築士を取っていく意匠屋さんたちよりも、
設備技術者ルーツの設備設計一級建築士のほうが多くなるように
しましょうよ。

その方が、現行制度も本来の目的にかなって健全化するし、
長期的な制度改正にも資するんじゃないかと思うんです。


どうですか?



その先にようやく、

「建築設備士を、設備分野限定の設計資格として位置づける」

とか

「設備設計事務所登録ができるようにする」

なんていう議論が日の目を見るようになっていくんじゃないかと思います。
(「設備技術者も一級建築士を取ったほうが良い」おわり)



(追記)

「オマエ、自分が辛うじて取れたからって、
 偉そうにしやがって」

そう感じる方がいらっしゃいましたら、
すみません。

決して、志高く、信念と不断の努力によって取ったんだぞ、
我に続け! なんていう意図ではございません。

自分自身の糞っぷりや、ヘタレぶりは
過去記事に存分に表出されていることと思いますから、むしろ
「こんな奴でも取ったんなら……」くらいに
思っていただければと思います。

お世話になったのは、
教育的ウラ指導の荘司さんほか、
ウラ指導関係の皆さま、勉強会等を通じて知り合った方々です。
設備技術者向けに、若干のアレンジは必要かと思いますが、
とても参考になります。
posted by けろ at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 建築士制度 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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