エキスパンションジョイント(以下、「EXP.J」)部分が損傷し、
「うちのマンション、割れてます」とか
「マンションがまっぷたつ」とか、
報道されていました。
「マンションも割れる、すさまじい地震」とか
「設計ミスじゃね?」とか、
いろいろ報道・コメントされていましたが、
ああなることで他の部分に損傷が及ばないように
意図して設けられたEXP.Jであることは言うまでもありません。
建物のEXP.J部分に配管を通す場合、
建物が動いても配管が破断・損傷しないように
対策が必要となります。
一般的なのは、フレキシブルジョイント2本を
直交方向に組み合わせて使う方法です。
そうすれば、X−Y−Z各方向に対して変位を吸収できます。
とある施設に行った際に、ちょっと残念な箇所を見かけました。
建物のエキスパンションジョイントのラインに
黄色い線を引いてみました。
銀色外装の保温材が巻かれている配管は、
たぶん給水管だと思います。
EXP.J貫通部奥で、フレキシブルジョイント2本(赤い矢印)が
直交方向に設けられています。
でも、EXP.Jのライン前後で梁貫通させているため、
手前側の躯体と奥側の躯体とで動きがあった場合に、
配管は千切れてしまいますね。
これでは、何のためのフレキシブルジョイントなのか、
わかりません。
排水管と思われる管(青い矢印)には、フレキシブルジョイント的な
ものも設けられていません。
大きな変位があると、破断して使えなくなってしまいます。
EXP.J部分の変位量は、
層間変位角 × 高さ
であるので、高い位置ほど大きく動くわけです。
写真の箇所は、ピロティとなっている部分。
配管貫通部は、地上5mくらいでしょうか。
層間変位角を
鉄筋コンクリート造で1/200
鉄骨造で1/100(鉄骨は柔軟性があるので)
として考えると、
変位量 = 5,000mm × 1/200 = 25mm
よって、梁貫通部分の穴を50mm大きく設けて、
左右25mmずつ動けるようにしておけば、
問題ありません。
白い塗装に黒い穴が目立つようであれば、
貫通孔内面も白く塗るとか、
穴隠しの板をゆるく(動いたらすぐ外れるように)
貼り付けておくとか、
対応のしようはありますね。
管軸方向にもスムーズに動けるように、
穴埋めや固定を避けるようにすると
良いでしょう。
高さ的に許されるなら、梁下を通すのが最も無難なんですが。
というか、梁下に配管を通すように階高を計画するのが本来かと。
(配管だけのために、階高全体を上げろというのか?
なんて言うことではなく、そういうことも含めて
全体を計画しましょ、という意味です)
EXP.Jのある建物を設計・監理される方、
ぜひそのあたりも良く注意してみて下さい。
(「エキスパンションジョイントを跨ぐ配管」おわり)
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