結構早いペースで、
省エネ関連の諸法規が、
改正・立法・施行されています。
従来の省エネ法に替わって、
建築物省エネ法(もちろんこれも略称です)が
適用されるようになってきます。
省エネといえば、
設備システムの効率向上や自然エネルギーの積極利用などの
メニューもありますが、
何と言っても「断熱計画」が重要なのは
言うまでもありません。
経済にしても人材にしても
「出ると入るとを制する」
ことによって、適切な管理ができるのですが、
建築物にかかわる『熱』『エネルギー』についても、
この「出ると入る」の管理が重要になってきます。
エネルギー収支を計画的に行うためには、
好き勝手に出入りしないように、
「断熱」を念入りに行う必要があります。
なのに、「断熱」に関する意識が、どうも
あまり高くない気がしてなりません。
建築の設計図において、
『仕上表』というものがあり、
そこには内外部の仕上げについての記載があります。
でもね、いつも困惑するのが『断熱仕様』の欄。
だって、たとえば
外壁:現場発泡硬質ウレタンフォーム吹付30t
って書いてあるだけなんです。
『建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム』には
いろいろと等級があって、断熱性能に違いがあるようで、
熱伝導率λ(W/m・K)の値は、
A種1 0.034以下
A種2 0.034以下
A種3 0.040以下
B種1 0.026以下
B種2 0.026以下
となっています。
出典:日本ウレタン工業協会
http://www.urethane-jp.org/qa/koushitsu/k-1.htm
A種3とB種とでは、65%も違うんですよ。
どれを採用するかによって、
断熱性能、ひいては、建築物全体の熱性能に
大きな違いが生じてくるわけなんです。
省エネとか、エコとか言うんだったら、
断熱性能を明記しなければ、
数字で語ることができないじゃないですか。
だから、ぜひ、明記を。
断熱計画も、意匠設計の重要な要素なんですから。
「ボード」って書くだけで、
材質とか厚さとか書かなきゃ、
意図したモノが出来ません。
「金属」って書くだけで、
材質とか仕上げとか書かなきゃ、
いらぬ所が錆びたり、
強度が不足したり、
周囲が丸写りしちゃったり、
設計意図が反映されない建物に
なっちゃいますよね。
強度が65%しかない素材があるのに
「それでもいいよ」なんていう図面では
マズいですよね。
空調設備計画は、断熱計画に基づいて行います。
設備担当に、
「断熱材、どのくらいがいいと思う?」
と訊くのは、筋違いなんじゃないかな。
「エントランス、東向きと南向き、
どっちが良いかな?」
って、訊くようなものです。
そりゃ、訊かれれば意見は申し述べますが、
そんなことを設備屋に訊いていいの?
ってなコトです。
そういうのは、統括設計者が、
建物全体の断熱計画の一環として、
決めてやらなきゃならない事項。
ディティールにも多大な影響があるでしょうし。
万一、今まで「記述が甘い」仕上表をお書きに
なっていた方がおられたとしたら、
今後は断熱材の欄には、
仕様(熱通過率と施工厚さ)を明記して、
熱性能を規定して下さいませ。
特に、これからの時代には
大切なことです。
昔聞いた、ある設備設計者の言葉が
印象に残っています。
「こんな、地球を暖めるラジエターみたいな
建物を計画しやがって……。
いくら暖房したって、エネルギーを無駄に
垂れ流すだけ。
何考えてんだか、この意匠屋」
言葉は悪いですが、
一理あると思いません?
「統括設計者の苦労を知らない設備屋風情が
何勝手なことぬかしてんねん」
そのご批判は、御尤もですし、
実際設備屋が物事を知らんことも
少なくないことと思いますが、
「勝手なこと」を言われてしまうだけの
隙があることをご認識いただいて、
空間計画や、動線計画や、ファザードのデザインと同じように、
断熱計画にもご配慮いただきたいなと思います。
「省エネ? 設備で何とかしてね」
少なくとも、こういう事を仰るセンセイには、
ちょっとお考えいただく必要があるんじゃないでしょうか。
(「断熱材の性能」おわり)
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