森の中。
こんな小川を下って行くと、
突如段差が現れて、
こんな滝になっています。
小川の『せせらぎ』にしか見えないような流れが、
ちょっとした瀑布と化しています。
水が落ちるエネルギーを利用して電気を起こすのが、
水力発電。
水がたくさん流れているほど、
落差が大きいほど、
発電できるエネルギーは大きくなります。
理論上の出力P[kW]は、
P=9.8QH (式1)
ここで、
Q:流量[m3/s]
H:落差[m]
9.8は、もちろん重力加速度[m/s2]です。
でも、装置(たとえば、水車)の効率ηW の分だけ、
出力は低減します。
更に、装置を経由して電気を起こす発電機の効率ηG も関与します。
よって、η=ηW×ηG の発電効率が掛かってきて、
実際の発電出力は、
P=9.8QHη [kW] (式2)
となります。
記憶力に自信のある方は、この式を丸暗記しても良いのですけれども、
なかなか難しかったりしますね。
(『映像記憶能力』を鍛えるのも良いかも知れません)
この手の物理的公式は、単位をきっちり押さえておくと
こんがらがったり忘れたり
しにくいのではないかと思います。
(式2)について見てみますと、右辺の単位は、9.8の分も考慮して、
[m/s2×m3/s×m]
となるのですが、実はここにウソがありまして、
流量の単位は正確には[t/s]です。
水 1[m3]の質量が 1[t]なので、
便宜上[m3/s]と書かれることが多いのですが、
正確には[t/s]。
1[t]は、1000[kg]ですから、もう一度右辺の単位を書き直すと
[m/s2×1000kg/s×m]
です。
(水以外の流体によって発電するなら、その流体の体積に
比重を掛けて、質量を出せば良いことになります)
(地球以外の天体で発電するなら、その天体の重力加速度を
9.8に代えて入れれば良いわけです)
ここで、力[N]=質量[kg]×重力加速度[m/s2]
([N]は、力の単位「ニュートン」です)
であるので、この[N]を使って上の単位を書き直すと、
[m/s2×1000kg/s×m]
→[kg×m/s2×m×1000/s]
→[N×m×1000/s]
となります。
「エネルギー」の単位(または、「仕事」の単位、とも言います)として、
[J]([ジュール])というものがありますが、
エネルギー[J]=力[N]×距離[m]
ですので、この[J]を使って更に単位を書き直すと、
[J×1000/s]すなわち、[1000J÷s]
です。
エネルギー(=仕事)[J]÷時間[s]は、仕事率[W]([ワット])
ですので、今度はこの[W]を使って書くと、
[1000W]
ということに落ち着きます。
[1000W]はつまり、[kW]([キロワット])となります。
等式では、右辺と左辺とで同じ量を表しているわけですから、
左右の単位を吟味すると同じにならなければなりません。
いろんな資格試験などで、
物理量について出てくる問題が種々ありますが、
この辺のところを押さえておくと、
択一問題などは割合楽に回答できるのではないかと
思います。
……って、こんな高校1年の物理の最初に出てくるような
ことを書いてしまって申し訳ありませんが、
単に「公式を丸暗記」して定期試験をやり過ごして来た方の中には
このあたりがあやふやになっている例もあるようです。
(あまり他人の事を言えた義理でも無いのですが、自戒を込めて)
質量、速度、加速度、力、エネルギー、仕事率など
物理量の意味するところと、その単位について
整理しておくことは、
いろんな分野で役立ちますし、
物事の理解の増進につながるものと思います。
冒頭の写真のちょっとした流れが、
流量Q=1.0[m3/s]
落差H=10[m]
装置効率ηW=0.80
発電機効率ηG=0.85
の場合、水力発電の出力はいかほどになるでしょうか?
試しに、求めてみて下さいませ。
大型の火力発電所や原子力発電所1基の出力(100万kW)、
大型風力発電の風車1基の出力(2000kW)、
メガワットソーラー発電の出力(1000kW)などと比べると、
かなり小さいですね。
なお、黒部川第四発電所は、
落差545.5m
最大出力335,000kW
とのことです。
どのくらいの流量があるのでしょうか?
効率は不明ですが、上記と同じとして試算してみると、
想定流量を出すことができますね。
(「滝は、水量×高さ」おわり)