合格者属性を眺めた上での雑感と、
この時期になると思い起こされること。
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多くの試験で受験番号しか発表されない中、
この試験の場合には氏名まで公表されます。
一般の新聞にも掲載されたりしますから、
やはり注目度の高い資格だということですね。
本年度試験については、
出題内容の分析、
出題傾向の変遷に関する研究、
解答私案の作成などの作業をやっていないので、
ワタクシは意見や感想を言えるような立場にありません。
とにかく、
受験された方にはお疲れさまでしたと、
合格された方にはおめでとうございますと
言うことができるのみです。
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JAEICの公表資料を見たところ、合格者の属性として、
学歴・資格別 → 建築設備士 0.6%
職務内容別 → その他(行政、設備設計、積算、研究教育 等)23.2%
となっておりました。
これを見る限り、いえ、見るまでもなく、
設備技術者の割合は、そんなに多くはなさそうです。
(この属性だけで「設備技術者」の割合を正確に知ることは
できっこありませんが)
なぜ、一級建築士の合格者のうち、設備技術者の占める割合が
小さいのだと思いますか?
この問いに対して、どのように回答するか。
普段から設備技術者との接触がどの程度あるかによって、
設備技術者が何をしているかをどの程度認識しているかによって、
回答が違ってくるのではないかと思います。
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設計業務全体のうちで、
「設備設計」の割合がとても小さいのであれば、
合格者の割合が小さくても当然と言えましょう。
でも、意匠・構造設計に比べて小さいとは言え
設備設計(機械設備・電気設備・昇降機設備)の
要素は、一桁%なんていうことはありません。
平成21年国道交通省告示第15号「業務報酬基準」の別表の数字を見ても、
設備設計の割合は、それなりにあることになっています。
「それはね、設備の人間が不勉強で、向上心がなくて、
一級建築士を取ろうなんて思わないからだよ」
もしも、こんなふうにうそぶく人が居たら、
建築設備技術者と真摯に向き合ったことが無い方なんじゃないかと
ワタクシは思います。
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一級建築士は、偉い。
一級建築士は、凄い。
そういう一面も、確かに存在すると思います。
テレビ番組になるくらい、世間一般にも認知されていますし、
不祥事でもあれば、資格名を出してのニュースになります。
『建築』ヒエラルキーの最上位に位置している資格であり、
資格者で且つ「総合設計」「PM」という職能に従事している場合には
絶大な権限を誇る立場である、という実態もあります。
しかし『建築』は、
一級建築士ではない多くの人々も関わって成立しているものでもあります。
背後で『建築』を支える、
さまざまな技能者、技術者、
材料メーカー、製品メーカー。
そういう存在に対して、
どのくらい意識が向いているでしょうか。
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「設備設計をしているなんて、勿体無い」
そんなコメントを聞いて、不思議に思ったことがあります。
毎年、建築士試験の合格発表があると、
ふと思い出します。
そう言う人にとって、『設備設計』というものが、
どのように見えているんでしょうか。
少なくとも、
「素晴らしいもの」に見えていることはなさそうです。
(「試験雑感」おわり)