2015年11月14日

『もんじゅ』に行ってみて(2)

高速増殖原型炉『もんじゅ』
(前回からの続きです)

もんじゅ4.JPG
(2次冷却系・蒸気発生器・タービン建屋)

大まかな構造は、一般の原子力発電所に近い面もありますが、
高速増殖炉ゆえの特殊性も多々見られます。

もんじゅ5.JPG
(冷却系ナトリウム配管)

一番大きな違いは、冷却系に液体のナトリウムを使用している
ことですね。

ナトリウムというと、
空気中でも自然発火してしまうので灯油に漬けて保存するとか、
水の上にちっちゃいかけらを乗せると、シューシュー火を吹きながら
酸化していくとか、
だからナトリウムが燃えているので消そうとして水などかけようものなら
爆発するとか、
そういう「超危険な物質」くらいの認識しかありませんでした。

そんな危険な代物を、よりによって「冷却水」として使用するなんて、
最初の設計思想からして大間違いなんじゃないか、
そういった感覚を持っておりました。

だから、なぜ「ナトリム」なのか、ぜひ訊いてみたかったのでした。

まあ、原子力施設に関して「素人」であるワタクシが、ちょっとやそっと
説明を聞いたからといってそうそう理解できるはずもありませんが、
聞かないままにしておくのは勿体無いことですから、とにかく訊いてみました。

冷却材としての性能が優れていることはもちろんですが、
ナトリウムが卑な金属であることも大きい、という説明を聞きました。
なるほど、昔々呪文のように諳んじた
「貸そうかな、まあアテにすな、酷すぎる借金」
です。
ステンレスではあるけれども鉄系の配管に対し、
内部流体のナトリウムは圧倒的に卑です。
よって、酸化要因があったとしても、配管はまったく影響を受けずに済む、
ということです。

実際、プラント配管系には一切の錆が見られないのだとか。
(確かめようはありませんが)

では、1995年に起こったように、もし漏れでて火災にでもなったら?

あの時は、動画が出回ったこともあってさも重大事故のように喧伝されたが、
ごく小規模で収まっていること、原理的に大事故に結びつかないこと、
消火も容易であること……
そんな説明をいただきました。

ナトリウム火災を消火するには、酸化ナトリウム粉末を使うんだそうで。
灰(もえかす)をかけて火を消すのと同様、
ナトリウムのもえかすである酸化ナトリウムの粉末をかけて、
窒息消火する、ということなんだそうです。

なるほど、それなりに制御可能な物質なのか……?
とは言え、懸念が払拭されたというわけでもないのですが、
講義ではないので、それ以上突っ込んだ質疑にもできず。
(でも会場では、いろんな処分に対する今後に向けての見解とか、
 結構厳しい質問も飛び交いました)


いろいろな説明、質疑応答などの後、実際に『もんじゅ』施設に向かいます。

炉及び周辺施設は、地形的にも動線的にも「陸の孤島」状態にしてあります。

情報棟から再度機構のバスに乗り、検問、ゲートなどを通過しながら
1kmほど先の施設に向かいます。
機構のバスであれば、爆発物が仕掛けられているとか、
誰かが隙間に隠れているとか、
そういう心配がありませんから。
乗車する人だけをチェックすればOK。

情報棟に入るときにも、炉施設に入るときにも、都度ICカードが配布されます。
事前に見学者の名簿(住所氏名など)が提出されており、当日その場で
免許証等と照合されます。

『もんじゅ』付属棟の入口以降、ゲートが何ヶ所もあります。
セキュリティレベルがより高いエリアに入るごとに、
いちいち何らかの検査が行われます。

(施設の性格上、セキュリティの詳細は描写しないことにします)

撮影可能機器類は預けてしまってあるので(当然のことながら、
情報棟以降はすべて撮影禁止なのです)、写真はありません。

セキュリティとは別に、放射線管理の諸手続きもあります。

放射線管理区域に入る時点で、
靴、靴下、作業衣、帽子、マスクとともに、線量計を装着。
出る際に、すべて回収。
汚染物質の移動を極力抑えるしくみになっています。

とは言え、性能試験後5年、全く稼働しておりません。
送電運転以降であれば、20年間、まともに稼働させておりません。
原子炉容器内を除いて、施設内の放射線はゼロ(検出限界以下)
です。

施設内のところどころに、線量表示がありますが、いずれの場所も
ゼロの表示でした。

たいへん大掛かりなエアロックを通過して原子炉格納容器の中に
入っても、放射線量はゼロのままでした。
工事関係者が普通の現場のように内部で作業をしていましたし。


『もんじゅ』は、原型炉です。
熱出力71.4万kW、電気出力28万kWに過ぎません。
(「過ぎません」と言っても、メガワットソーラー(=1000kW)なんかより
 はるかに巨大な出力ですが)
だから、比較で言うなら、小さな施設です。

原型炉での運転、研究を経て、より大型の実証炉を建設、運用し、
実用炉へと進んでいく……それが、本来の核燃料サイクルの目論見でした。

福島第一の1号機で46万kW、2〜5号機は78.4万kW、6号機は110万kW。
福島第二は、1〜4号機とも110万kW。

形式は異なるとはいえ、この『もんじゅ』よりも更に大きな原子炉で
爆発事故があったというのは、やはり相当危険な出来事であったと
実感できます。
『もんじゅ』のモノを見ることで、スケール感が実感として得られたのでは
ないかと思います。


『もんじゅ』に限らず、原子力施設では、その性格上どうしても
放射線に晒されながら仕事をしなければならない方々が必要になります。
放射線被曝がデフォルトである作業従事者に関して、
「そんな非人道的な作業が必須であるなんて、とんでもない」
という意見もあれば
「そのリスクに見合った報酬を得られ、むしろ定期的にきめ細かい検査を
することで早期発見につながり、一般の労働者よりガン死の可能性が低いんだ」
という意見もあるようです。

宇宙飛行士とか、大学や研究機関の実験炉とかであれば、たとい放射線下での
作業を余儀なくされようとも、それぞれがリスクを理解した上で納得して志願して
従事するわけですから、まあ、良いかなとも思います。

しかし、商業炉となると、たくさんの「よくわからないまま投入される人材」が
必要となってしまいます。
福島の後始末に駆りだされている多くの人達のように。

観たこと、聴いたことについて、
ここではあまり詳細には触れないことにします。
気になる方は、やはりご自分の目でみて、耳で聞いて、
ご自身の考察を巡らせていただくのが一番かと思いますので。


ともかくも、『もんじゅ』に行ってみて、
いくつかの疑問に関しては、それなりの理解を得ることができました。
一方で、別の疑問もいろいろと生じてきました。

現時点では、原子力発電の商業炉としての稼働に反対する意見は
変わっていません。今のところ、今後も変わらないような気がします。

でも、今後も、情報収集は続けていきたいと思いますし、
機会があればさまざまなエネルギー関連施設を見て、
関係者のお話を聴いて、
考えるための材料を得続けていきたいと思っています。


「せつび」と、何か関係があったか……って?

もちろんです。
原子力施設は、一般の建築物における設備のグレードアップ版のようなもの。
一般には使用されないシステム、材料、工法、基準、施工管理によるとは言え、
配管をつなぎ、ダクトを伸ばし、ケーブルを連ねて、流体や電力や情報を
運び、何らかの機能を果たす。
そういう大まかな流れは「せつび」そのものと言って差し支えありません。

現地に設置されていた、建築設備としての「せつび」、
プラントとしての「せつび」
それぞれ、大変興味深く、多くの示唆を得ることができたのでした。
(「『もんじゅ』に行ってみて(2)」おわり)
posted by けろ at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 設備一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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