反面、ペレット形状に加工するために手間と熱と動力が必要で、コスト的・エネルギー的に不利になってしまうというデメリットもあります。
いっそのこと、切ってきた木を小割りにするだけにして、直接ボイラーに投入しちゃえ、という考えがあってもおかしくありません。
そもそも昔は「薪ストーブ」が当たり前でしたし、最近だって小洒落た住宅や施設で薪暖炉を設けることがあります。
ボイラーに薪を直接投入して温水を作り、暖房に利用する。これも立派な熱源システムです。
先日行った、とある温泉施設で、薪ボイラーを見かけました。
時々ボイラー前面の蓋を開けて、薪を直接放り込みます。文字通り『投入』します。
薪投入は自動ではありませんでした。頃合いを見て人間が直接入れます。
作られた熱は、暖房・給湯・浴槽加温のために使われるのですが、作られる熱量と使われる熱量がいつもバランスしているわけではありません(というより、バランスしていないのが普通です)。
そのため、この施設では、ボイラーでお湯を加熱して「蓄熱槽」に貯めておきます。蓄熱槽内の湯を温水として循環させて暖房に利用します。給湯や浴槽加温の分は熱交換器により熱を取り出して使います。油焚やガス焚のボイラーでしたら、燃料供給量の増減によって出力調整が比較的やりやすいのですが、薪の場合にはそれが難しい。そのために「蓄熱」という方法を取ったものと思います。「蓄熱」する場合には、最大負荷よりも小さな出力のボイラーで済みます。ボイラー本体に要する費用、蓄熱関係に要する費用を見繕って、丁度良いバランスの出力、蓄熱容量を設定するのが良いでしょう。算定が難しいし、なかなか思うようにならなかったりするのですけれども。
この薪ボイラーは最近導入したのですが、既存の油焚きボイラー(法律的には温水機)がありましたので、油焚きの方はバックアップ用に使用します。
木材供給の難や、どえらく冷え込んで薪ボイラーで追いつかないような事態になった時には、この油焚きボイラーが活躍できるようになっています。今のところは、薪だけで大体まかなえているようです。
木材の産地や加工場に近く、安定して供給できるような立地条件にある施設なら、薪利用も選択肢の一つとして考えられますね。
せっかく温泉施設に行ったのですが、このシステムを見るのが主目的でしたので、温泉には入らずじまい。勿体無いと言えば、勿体無い。湯浴みはまた別の機会に……。
(「薪ボイラー」おわり)
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