2014年10月18日

試験のための学習方法2

前回は、『掛け算』を題材に、試験のための学習方法について一例を書いてみました。

今回は、同じ『掛け算』に取り組むにしても違うアプローチがあるのではないか、ということを書いてみます。

3桁×3桁、3桁×2桁の掛け算を全部暗記(以降「全丸暗記」と書きます)するのは、かなり難しい。
記憶の得意な人や、努力の才能のある人なら可能かもしれないけれども、一般の人間にはかなりつらい。

そういうわけで、「全丸暗記」作戦を取るのはやめにします。


そもそも、「掛け算」とはどういうことでしょうか。

10進法における3桁の掛け算(ABC×DEF)とは、
ABC×Fと、ABC×E×10と、ABC×D×100を足し合わせること。
そして、ABC×Fとは、C×Fと、B×10×Fと、A×100×Fとを足し合わせること。

つまりは、1桁×1桁の掛け算と、かける10、かける100の操作と、足し算(時として繰り上がりがある)とで成り立っているのが「掛け算」です。

ということは、「全丸暗記」をしなくても、掛け算を構成する要素についての学習(以降「要素学習」と書きます)をすれば大丈夫だ、どんな数字の組み合わせでも対応できる、ということがわかります。

もし新問として「4桁の数字」が出題された場合、「全丸暗記」では全く対応できません。
でも「要素学習」なら対応できます。やることは同じで、「かける1000」の操作が増えるだけです。何なら5桁でも10桁でも問題ありません。


ということで、一所懸命に暗記するのは「1桁×1桁の掛け算」すなわち、「掛け算九九」だけ済みます。

いんいちがいち、いんにがに、……くはしじじゅうに、くくはちじゅういち

これだけは、一心不乱に覚えます。とにかく覚えます。
覚えにくい苦手な段については、書いた紙を壁に貼ってでも、手に書いてでも、食事の前に必ず暗誦する習慣にしてでも、とにかく覚えます。それでも「全丸暗記」よりは遥かに楽なはずです。

九九がある程度身につき始めたら、筆算の方法を学びます。
この方法を使うと、かける10、かける100という操作を、意識すること無く簡単に行うことができます。

この辺から、市販のドリルを使うと良いでしょう。

筆算のパターンを細分化して、かける数とかけられる数の桁数(2桁、3桁)に応じた計算シートや、足し算をする際に繰り上がりが無いもの、慣れてきたら繰り上がりもあるもの、更には3桁目、4桁目まで繰り上がるものなどのパターンもやります。
途中で「九九」が怪しいと思ったら、何度でも繰り返して九九の復習を行います。

いろいろ練習問題をやっているうちに、「繰り上がりの足し算」で結構間違うことがわかってきました。

それではまずいので、別に「足し算ドリル」を買ってきて、繰り上がりの間違いをしないように訓練します。

九九、パターン別筆算、足し算

これらがある程度身についてきたと感じたら、過去問題を問いてみます。

数字を変えて自分で作ってみた問題、受験仲間がブログにアップした問題、出版社が出した問題集、塾でやる模擬試験、何でも構いません。自分の実力がついているかどうか、弱点はどこか、確認して必要な対処をします。


以上をしっかりやれば、掛け算の試験は難なくクリアできますよね? あわよくば満点ですし、まあ多少のミスがあっても、不合格ラインまで落ちる心配はありません。
受験番号と名前を正確に書き、解答のマークミスさえ十分に注意すれば、まず落ちることはありません。

「全丸暗記」作戦と比べて、どうでしょうか。

努力や苦しみが足りない分、「要素学習」作戦は劣っている方法なのでしょうか。

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「全丸暗記」と「要素学習」

どちらが学習に適していると思いますか。
試験の合格に向けて、どちらが効率的、効果的でしょうか。

言うまでもありません。

「全丸暗記」は、ものすごい努力を要する割には、目覚ましい成果を上げるのが難しい方法です。
「単純記憶の訓練」という意味では、良い訓練になるかも知れませんが、「合格」という目標のためにも「理解」という目標のためにも、あまり高い効果を望むことができません。

「全丸暗記」よりも「要素学習」でやったほうが、少ない努力で済むし、効果が高く、応用力もつきます。

「九九」という部分だけ取り上げれば、まさに「全丸暗記」に違いありません。
これはどうしても覚えなくてはならない要素です。

何なら九九を覚えずに、都度思考の中で掛け算を構成することも可能ではありますが、限られた試験時間の中で解答するためには、九九を覚えるほうが有利です。日常生活上も九九を覚えていたほうが役に立ちます。

丸暗記部分とそれ以外の部分(以降「理論要素」と書きます)との配分量は、人によって、また『試験』の性質によって異なるでしょう。その判別は必要です。

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今まで書いてきた「掛け算の試験」の受験者には、いろいろな人がいることでしょう。

・学校で一通り習ってきてほぼマスターしている人
・学校で一通り習ってきたはずだけど、ほとんど身についていない人
・九九は覚えているけれども筆算は初めてという人
・足し算はできるけれど「九九」というものを知らない人
・繰り上がりの足し算が出来ない人
・「数字」というものに初めて触れる人

同じ試験を受ける場合でも、それぞれの人によって、必要な学習の量や内容、方法が異なってくるのは当然です。

数字に初めて触れる人は、まず「数とは」という概念的な内容から始めなければならないでしょう。
数の概念もないまま、ひたすら九九を覚え始めても、それを有効に使うことができません。

言語の概念がない九官鳥がいくら言葉を覚えても、「言語を話す」ことにならないのと同様です。


足し算、繰り上がり、九九、筆算、……というレベルの違いは、「基礎学力の違い」と言い換えることができます。

受けようとする試験に対し、それに関する基礎学力がどの程度あるかによって、その試験に対する取り組み方が違ってきます。


英検を受ける場合、ひたすら過去問をやり続け丸暗記しても、やはり難しい面があります。
受ける級に応じて、そのレベルの基礎単語をしっかりと反復練習して身につけ、イディオム・構文・文法の知識を加味し、発音、聞き取りの総合的な訓練を必要とします。


あらゆる試験において、同様なことが言えましょう。

初受験で受かった人は、全丸暗記的能力が極めて高かったか、その分野に関する基礎学力がある程度有ったか、そのどちらかでしょう。

基礎学力を身につけるに当たって過去にそれなりの努力と苦労とがあったわけで、『勉強法が』とか『取り組み姿勢が』とかそういう枝葉末節だけで「簡単に」合格するわけじゃないんだ、ということです。



理学工学技術系の試験を受ける際には、物理や数学など自然科学の基礎の有無によって試験勉強に要する時間や労力に大きな差が出てしまいます。
建築士試験における構造力学は、その一例でしょう。

建築は「技術」的要素を多く含む分野なので(芸術や法律など対象領域が広いのですが)、その領域の基礎が少ないほど、建築士試験の合格に向けて多くの労力と時間を要してしまいます。

基礎学力が(ある分野で)少ない人にとって、取りうる戦略は何でしょうか。
「全丸暗記」作戦でしょうか。「要素学習」作戦でしょうか。



『良い学生』とは言えない者であったワタクシは、そういう面では社会に出てから結構手こずっています。基礎が弱い分野の試験を受ける時には、いつもそれで苦労します。
もちろん、自業自得(因果応報=サボった、もしくは取り組んで来なかったツケ)以外の何物でもありません。

でもそういう場合には、ちゃんと基礎に戻って勉強すれば、理解が進み(理解度の高低はあるにしても)、試験の合格に近づいていくことができます。ここで言う「勉強」とは、「◯◯技術者試験、一発合格」なんていう受験参考書を使用するものではありません。

「◯◯学基礎」とか「△△学概論」とか、高専や大学の教科書として使用されるような書籍や、「基礎から学ぶ◯◯◯」というような入門書籍、あるいはその両方など、自分の理解度に応じたものを選択することが大切です。

前述の「掛け算試験」で、「繰り上がりの足し算」に立ち戻る必要が有ったように、自分の理解程度が低いと感じたら、更に前段階の書籍を入手したほうが良いかも知れません。

自分が「何をわかっているか」「何をわかっていないか」を把握して選択しましょう。



『勉強法』も、それなりに有効な面があります。
けれども、いろいろ試しても伸び悩み、期待した効果が出ない場合、『基礎学力から積み上げる』ところまで遡って学習し直したほうが、総合的に効率が良い場合もあるのではないでしょうか。

「この試験を受けるための基礎学力がどの程度身についているのか」

分野別に、検証してみるのも必要です。


「かんたん合格◯◯◯士」なんて本もありますが、簡単かどうかは、その人の基礎学力次第。
「何から何まで全部丸暗記作戦」を取るよりは、基礎学力を向上させたほうが結局近道だということもあるでしょうから、どうぞお試し下さい。

自分にとって、「丸暗記」と「理論要素」との配分をどのようにしたら良いのか。それに基いて、どのように学習を進めていくのか、正確に冷静に判断して戦術を練る。それこそが試験対策であり、合格(本質的には、その分野に関する理解)に向けての近道なのではないかと思います。
(「試験のための学習方法2」おわり)
posted by けろ at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 建築士試験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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